シマンテックは7月9日、2009年会計年度の戦略説明会を開催した。今年1年は「国内エンタープライズ ビジネス戦略」における「一カ年基盤固め政策」の年と位置づけられ、さらなる顧客満足度向上を目指して活動していくという。
世界のソフトウェア市場におけるシマンテックの位置
説明を行なった同社の代表取締役 兼 日本地域担当バイスプレジデントの加賀山進氏は、ワールドワイドでのSymantecの位置づけについて、独立系ソフトウェア企業として第4位だというランキングを紹介した。
トップ3は、Microsoft、Oracle、SAPで、同氏によれば「ソフトウェア企業は特定分野でNo.1になることで成長が可能になり、企業の規模は、その企業がNo.1を取った市場のサイズによる」との認識を示した。MicrosoftはOS、Oracleはデータベース、SAPはERP/アプリケーションでそれぞれNo.1になったことがこのランキングの背景にあるという。
そして、同氏が示した各社の2007年度通期売上は、Microsoftが511億ドル、Oracleが224億ドル、SAPが152億ドルで、続くSymantecは60億ドルだという。この売上規模の差が市場規模の差というわけだ。
一方で同氏は、「Symantecが現時点でNo.1になっている市場はセキュリティやアベイラビリティなどのITインフラの部分」としつつ、データ量の急増やサイバー犯罪の組織化といった動向を踏まえると市場自体の規模拡大が今後も継続するとし、「情報をセキュアにマネージすることに取り組むSymantecは、無限に大きくなるのでは」と語った。
日本では「顧客満足度の向上」にフォーカス
さらに同氏は、ワールドワイドでのSymantecの成長率が13〜14%に達しているのに対して、日本での成長率が1桁台に留まっていることを明らかにし、「成長曲線が乖離している」ことが問題だとの認識を示した。
今回発表された戦略は、この乖離状態を解消し、成長率を高めるための戦略と位置づけられる。ここで重点目標とされたのが「顧客満足度の向上」で、具体的には「サービス・品質の向上」「ビジネスのしやすさの向上」「シマンテック認知度の向上」の3点となる。
また、新しい販売モデルとして、従来のパートナー戦略の転換も明らかにされた。
同氏は、新製品がまず「イノベーター」や「アーリー・アダプター」に受け入れられ、続いて「アーリー・マジョリティ」「レイト・マジョリティ」に広がって一般化していくという、よく知られたマーケティング理論を踏まえ、新製品投入後、マスマーケットが立ち上がる前のイノベーター/アーリー・アダプターへの対応に関しては自社で積極的に取り組むことで「ベンダーとしての責任でマーケットを作り出し、スムーズにパートナーに引き継いでいく」という方針を打ち出した。
従来の同社のパートナー認定は「三位一体」で、販売/導入/サポートのすべてを手がけるパートナーを中心にして、いわば「すべてを任せる」スタイルだったという。
今後はこれを転換し、市場を開拓して確実に売れる状況を作った上で、パートナーが安心して売れるようなサポート体制を整え、パートナーにビジネスを引き継いでいくというやり方にするという。同時にパートナー認定も、販売/導入/サポートの全てを手がけない事業者にも拡大するという。
同社では積極的なM&A戦略もあって大量の新製品が次々市場に投入されるが、マスマーケットを獲得する製品は少ないという。具体的に同氏は、「売上の90%以上が10製品くらいによるもの」だと明かした。つまり、ほとんどの製品がマスマーケット獲得以前の段階で埋もれてしまっていることになり、この状況を改善するためにベンダー自身が市場開拓を行なうことで、パートナーがリスクを取らなくて済むようにするという。