企業ITの船長は誰? 何を頼りに船を進める? - (page 3)

エリック松永

2008-09-05 08:00

 モチベーション上のメリットもあります。経営者の想いがそのまま落ちてきますので、IT技術者も戦略を意識しながら仕事をすることになり、同じ船の同志として士気もあがるでしょう。しかし、最終レイヤーまで、船頭はあくまで経営者です。このモデルでは経営者が意図しないものはIT化されません。

 この表でIT設計者は、経営の意思を受けてコスト(HOW MUCH?)や時間(WHEN?)を強く意識しなければいけません。そのコストや時間を短縮する方法の一つがSOAやSaaSと考えると、これまでの話と繋がりやすいのではないでしょうか?いずれにせよ、全ての出発点は、戦略をいかにITに落とすかにあり、その解決方法が上で紹介したような枠組みで考える事です。このような考え方をEA(Enterprise Architecture)と呼びます。EAとは、

企業が戦略を実現する為に経営者の意図する基本的なコンセプトから実際に目的を達成する為の成果物の集合体
と定義出来ます。

 しかし各企業が独自にEAを作るのは大変です。そこで実際のプロジェクトのノウハウを体系化し、枠組みやドキュメントのサンプルを提供したものがフレームワークです。今回ご紹介したフレームワークは、EAの元祖であるJohn A. Zachmanの提唱しているZachmanフレームワークをベースに説明をさせていただきました。参考まで、本物のZachmanフレームワークはこんな感じになっています。

 戦略をITに落とし込むに当たってEAの重要性をお分かりいただけましたでしょうか?EAというと、フレームワークの複雑さや、ドキュメント作成の困難さばかりが指摘されているように感じますが、お話しした通り、戦略をITに落とす上で大変重要な考え方です。フレームワークはある意味フルセットの枠組みですので、全部を使う必要もありません。企業の人員やかけられる工数を考慮しながら、独自のEAを作り上げても構わないのです。EAはあなたの船(企業)のチャート(海図)です。チャート(海図)の無い航海など考えられませんよね。まずはノウハウの蓄積であるフレームワークを活用し、自社の戦略を6つの視点で描き、ITの方々とディスカッションする所から始めてみてはいかがでしょうか?

Peace out,
Eric

Eric
筆者紹介

エリック松永(Eric Matsunaga)
Berklee College of Music、青山学院大学大学院国際政治経済学研究科(修士)卒業。19世紀の米国二大発明家Graham Bellを起源に持つ米国最大の通信会社AT&Tにて、先進的なネットワークコンサルティングの領域を開拓。その後アクセンチュアにて、通信分野を柱に、エンターテインメントと通信を活用した新事業のコンサルティングをグローバルレベルで展開する。現在、通信業界を対象にした経営コンサルタントとして活躍中。

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