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ファーストリテイリングCIOが考える「CIOの資質」とは - (page 2)

富永康信(ロビンソン)

2008-09-05 22:41

ビジネスプロセス革新のカギは「巻き込み」

 「ITパートナーとして、ビジネスプロセス革新のカギは何だと考えるか」という堀内氏の質問に対し、荒田氏は「顧客と一連託生になるためのチームプレイ」であると答える(図2)。

 「経営戦略やビジネスモデルと強く連携したシステムを構築するためには、CIOが核となるチームを作り、そこにIT部門だけではなく、事業部門のメンバーも加え、さらにパートナー企業もプロジェクトに対峙(たいじ)することが必要。そして、その組織を組成する権限をCEOから与えられることも重要」(荒田氏)

 また岡田氏は、「CIOとはいえ皆が皆、業務改善について明確な答えを持っているとは限らない」といいながら、それでもCIOが改革に舵を切るために重要なことは「巻き込み」だと話す。経営層と事業部門、情報システム部門をうまく巻き込んで、何を変革していくのか、変革には何が課題かといったことへの答えを作っていくのがCIOの務めだという。

 「事業部門の中では誰がキーマンかをCIOが理解しておくことも大切。キーマンは部長や課長ばかりとは限らず、実務に携わる現場の人であることも多い。さらに、ITベンダーは情報システム部門の経験不足を補ってくれる存在であり、プロジェクトの核となるチームに巻き込み、一緒に考えていくことが改革を促進させる」と岡田氏は強調する。

核となるチームに経営層と事業部門そしてITパートナーも巻き込み、牽引することがCIOの役割 核となるチームに経営層と事業部門そしてITパートナーも巻き込み、牽引することがCIOの役割

グローバル展開が「システムの親会社化」を進める

 そして話題は、他社が情報システム子会社化を進める中、その正反対の動きをとるファーストリテイリングの情報システム戦略に移った。

 現在同社は、子会社が10数社を数え、さまざまなブランドを抱える形になったが、買収を進めながらグループ各社に存在した情報システム部門を本社に集約し、システムを共通化してきた。これを岡田氏は「システムの親会社化」と表現する。

 以前は、全体の企画をファーストリテイリングが担い、ユニクロの中に置かれたシステム部門がグループ全体のシステム管理を担う形をとっていた。しかし、海外の企業を子会社化して情報化教育を進める上で、ユニクロのスタッフが乗り込むと、直接の資本関係がないために反発も多かったという。そのため、ファーストリテイリングが持ち株会社の立場で教育や指導を行うことで、子会社もすんなり受け入れるようになったことから、システムの親会社化が進んだという。

 「情報システムは、ビジネスの先を読み業務を変革していくためのものであり、強制力、指導力が必要になる。そのため、今はシステム部門を親会社の中に置き、親会社の立場で子会社の業務改革を実践している」(岡田氏)

CIOは社内活性化の触媒となるべき

核となるチームに経営層と事業部門そしてITパートナーも巻き込み、牽引することがCIOの役割 「ユーザー企業の社員と同列に期待されるITパートナーも責任重大だ」と感想を述べる堀内秀明氏

 これを受けて堀内氏は、「人材育成、外部環境の変化への対応、自社の成長と、CIOには重い役割が課せられるようだ。今後、そんなタフな環境で舵を切っていくという立場のCIOに必要な素養とは何か?」と両名に問いかけた。

 それに対し、岡田氏は「3つ挙げられる」と応える。

 まず1つ目は、業務や会社への理解と、経営やマーケットに対する知識があること。企業の構造や商売のメカニズムに関して理解することが、現場の人たちに対して変革を促す上で必要だという。2つ目は、IT化を推進する力。IT業界やITを活用するための理解、プロジェクトマネジメントのスキルや経験が重要だという。そして3つ目が、改革への覚悟だ。現場を変えていくには信念が必要であり、抵抗や反対に対しても厳然とした態度が求められるという。

 「いつクビになっても構わないというほどの覚悟がなければ本当の変革には至らないだろう」(岡田氏)

 一方、荒田氏は、岡田氏の考えと大きく重なるとしながら、CIOに求められる資質は次の5つに集約できるとする。

  1. ITと自社のビジネスの双方を理解し、ITのビジネス上における価値を正確に説明できること。
  2. 組織全体の中で変革の推進者であること。
  3. 経営陣に対してIT戦略のコミットを交渉できること。
  4. 経営戦略・ビジネスモデルと強く連携したシステムを構築するために、ユーザー部門・情報システム部門を巻き込んだチームを牽引していくこと。
  5. 社内活性化を実現する仕組み作りと次代の人材を育成すること。

 「今後CIOの役割は今以上に拡大する。社内の活性化や、コミュニケーションの促進に向けた触媒になるという意識を持つ必要がある」(荒田氏)

改革には失敗がつきもの

 そして、このパネルの最後に、堀内氏から「ビジネスプロセス改革を進める上で必要なポイントを示してほしい」と求められた岡田氏は、「新しいことにチャレンジするためには失敗はつきもの」と答える。

 ファーストリテイリングも、小売からスタートし、生産管理や素材管理までコントロールするまでに至っている。しかし、それらは試行錯誤の連続だったという。

 「失敗を失敗で終わらせないためには、仮説・検証を繰り返し、裏を取りながら真にビジネス改革へとつながっていくものを作ることが大事だった」(岡田氏)

 CIOとして、失敗しても挑戦し続ける人を高く評価し、支援していくことを自らに言い聞かせているという岡田氏は、「失敗があってこそ、初めて成功が見えてくる」と語り、パネルディスカッションを終えた。

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