10月23日に開催されたZDNet Japan主催のイベント「ZDNet Japan Social Technology Conference 2008」にて、ドリコム 執行役員の長谷川敬起氏は「CGMマーケティングの始め方」と題した講演を行い、最近のCGM(Consumer Generated Media)サービスの動向と注目すべき事例を紹介した。
敷居の低さがウケた「うたスキ」
まず長谷川氏が最初に紹介したのは、カラオケ「ジョイサウンド」における事例「うたスキ」だ。カラオケで歌った歌のデータが自動的にサイト上に登録され、自身のカラオケデータが記録できるほか、他ユーザーとの比較や協奏も可能というものだ。これは、サービスそのものが何らかの価値を提供するというよりも、リアルビジネスの付加価値を向上させる目的で作られた。
うたスキは、開始1年半という短期間でユーザー100万人を獲得した。この大きな成長の理由として長谷川氏は「アカウントを作りさえすれば、あとは歌うだけでデータが入力されるという敷居の低さに尽きる」と説明する。ユーザーによる入力の負荷はほとんどなく、かつコンテンツは容易に増える。そのコンテンツが他人と共有されることで、ユーザーの競争心をあおるという構図がうまく機能したのだ。
同様に「敷居の低さ」がポイントとなった事例として長谷川氏は、Nikeの提供する「Nike +iPod」を挙げる。これは、シューズにセットしたセンサーによりランニングのデータをiPodで取得するシステムだ。iPodをPCに繋ぐと、ランニング時間や距離などのワークアウトデータがサイト上に取り込まれる。
一方、ベネッセコーポレーションの「たまひよweb」では、子どもの成長を細かく記録できるライフログ的なサービスを提供している。妊婦や乳幼児の母というニッチなユーザーを対象に会員を獲得し、雑誌媒体の読者データを取り込むと同時に、ターゲットの絞れられた広告媒体として一定の収益を上げている。
ほかにも長谷川氏は、CGMがうまく機能している例として、目標の体重を設定し、体重の推移を入力するオルビスのダイエットサポートサービス「カロリヲ」や、会計士を目指すユーザーが日々の学習記録として利用するクローズドSNS「ハピララ」などを紹介した。
長谷川氏は最近のCGMの流れとして、「広範囲のユーザーを対象とした『mixi』のようなものから、特定のクラスタにフォーカスして、そのクラスタならではの詳細なログを記録・共有する方向へ移行してきている」と言う。こうしたコミュニティにおけるユーザーの目的は、興味のある情報を共有し、セルフチェックができることだ。こうした目的達成のためにも、「ユーザーが投稿するモチベーションを喚起しやすいサービスにおいて、CGMは非常に有用だ」と長谷川氏は述べた。