しかし、一律のITコスト削減はさらなる業績悪化につながるというのが佐分利氏の主張だ。それは、IT市場専門調査会社のデータにもあり、マイクロソフトの社内データでも証明されるという。
「帝国データバンクと私たちのデータをマッチングさせた結果、Active Directoryを導入している企業と導入していない企業の業績には明確に相関関係があるとわかった。Active Directoryを通じてインフラが構築されているところは業績がよいのだ。さらにわれわれは、他社の同様のソリューションを導入した企業とActive Directoryを導入した企業を比較したデータも持っているが、Active Directory導入企業の方が成長率が優れている。単にソリューションを導入するだけでなく、その選択肢も重要ということだ」
こうした考えが、同社が12月15日に発表した「Save Money.キャンペーン」につながる。このSave Money.キャンペーンの裏にあるのは、「厳しい経済情勢にある今こそ、将来を見据えた戦略的なIT投資が重要」というコンセプト。つまり、佐分利氏の言葉どおりだ。
今だからこそ「安さ」が強みに
「このSave Money.キャンペーンでは、今話題になっているテクノロジや、新たにわれわれから提案するソリューションを事例を含めて紹介していく。たとえば、マイクロソフトでは全世界で3500台ほどのサーバが動いているが、去年はその25%を仮想環境に移行し、約10億円のコスト削減を実現した。現在、4人の社員がこのすべてのサーバを管理している状況だ」
Unified Communication(UC)に関しても、マイクロソフト自身の事例がある。IP化ソリューションを導入することで、同社の2008年度(2007年7月〜2008年6月)は約5億円のコスト削減に成功した。もちろん、社外にも成功事例がある。ジュピターテレコムはマイクロソフトの音声コミュニケーションサーバ「Office Communication Server」を導入、出張費を30%削減した。
「数年前、『IT Doesn't Matter』という論文がHarvard Business Reviewという雑誌に出て話題になった。『ITはたいした問題ではない』というものだったが、それは明らかに誤りだ。ITは重要な投資なのだ。少なくともコラボレーションやSFAのような、生産性を向上する分野においては、ITの投資が欠かせない」
佐分利氏は、現在のような厳しい経済環境の中で、日本企業がこれまでのような「頑張り」だけでは太刀打ちできないと指摘する。少子化、グローバリゼーションという時代の中で、女性や外国人も日常のワークスタイルに取り込む仕組みが求められる。「多様なワークスタイルのニーズをうまくアドレスするためにはITが不可欠」というのが佐分利氏の主張だ。
もちろん、仮想化やUCなどの分野には競合もいる。しかし、どのカテゴリーをとっても「マイクロソフトは圧倒的に低価格でソリューションを提供できる」と佐分利氏は言う。
「Bill Gatesは昔から『Software for the Masses』と主張していた。誰でも手に入るように製品を安く幅広く提供するというのが彼の考えで、そのモデルは今でも変わっていない」
厳しい経済環境だからこそ、この「安く幅広く製品を提供する」というマイクロソフトの強みが競合との強力な差別化要因になるのかもしれない。