クラウドコンピューティングにおける5つの神話を打ち砕く

文:Cath Everett (Special to ZDNet.co.uk) 翻訳校正:村上雅章・野崎裕子 2009年02月11日 08時00分

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 クラウドコンピューティングは近年のIT業界では例を見ないほど市場で喧伝されている手法の1つである。確かに、クラウドコンピューティングというビジネスモデルにはさまざまな利点がある。しかし問題は、さまざまな規模や種類のベンダーが、クラウドコンピューティングの甘い蜜にありつこうとするあまり、自らの都合の良いようにその特徴を曖昧にしたり、誤った定義を吹聴しているという点にある。

 彼らがクラウドコンピューティング分野に軽率な考えから参入したおかげで、クラウドコンピューティングに関する多くの誤解が生まれてしまった。このため、顧客が確かな情報を元に意志決定を行うことが難しい場合もしばしば出てきている。そこで本記事では、よく見かける5つの神話を取り上げ、そのウソを暴いている。

#神話1:クラウドコンピューティングはSaaSやグリッドコンピューティング、ユーティリティコンピューティングと同じである。

 「クラウドコンピューティング」という用語は、サービスを格好の良い、面白いものとして印象付けようとする人々に悪用されてきている。最新の流行に乗ってみるというのは、テクノロジ業界に生きる人々にとってお気に入りの気分転換になっているとはいえ、ことクラウドコンピューティングに関して言えば、顧客に混乱をもたらしてしまっている。彼らは何を求めてよいのか、あるいは支払った対価に対して何が得られるのかということについて、よく判っていないのである。

 このため、ここではっきりさせておこう。クラウドコンピューティングとはアウトソーシングの1つの形態であり、ベンダーがインターネットを介して数多くの顧客にコンピューティングサービスを提供するというものである。こういったサービスにおいて提供されるものは、顧客関係管理(CRM)といったアプリケーションから、ストレージや開発プラットフォームといったインフラまでさまざまである。

 こういったサービスは、仮想化テクノロジを用いることで膨大な数のCPUを1台のコンピュータエンジンとして稼働させている、極めてスケーラビリティの高いデータセンターによって提供されている。こういったアプローチによって、負荷は複数のマシンに分散され(マシンも複数のデータセンターに分散配置することが可能である)、顧客のニーズに応じてキャパシティを割り当てたり縮小したりすることが可能となっているのだ。

 また、アプリケーションというものは事実上、複数のユーザーによって共有されるかたちになるため、同一マシン上で同一パッケージのインスタンスを複数、実行することができる。このため、システムリソースを多数のユーザーで共有することも可能となっており、コスト削減につなげることができるわけである。

 Software-as-a-Service(SaaS)は、クラウドコンピューティングで最もよく知られている形態であるが、提供されるものすべてにおいて大規模なスケーラビリティが実現されているわけではないため、厳密に言えばクラウドコンピューティングの1カテゴリに過ぎない。このことはつまり、SaaSの提供しているものはクラウドコンピューティングである一方、クラウドコンピューティングはSaaSではないということを意味している。

 これに対して、グリッドコンピューティングとは、さまざまなマシンを緩やかに結合したクラスタをネットワーク接続したシステム形態のことである。こういったマシンは、一般的にはCPU負荷が高いか、膨大な量のデータにアクセスする必要のある科学計算や技術計算が必要となる単一の問題を解決するために連携して動作するようになっている。

 クラスタは1つの組織内に設置される場合もあれば、多くの組織が参加する大規模な公的共同事業の一部を成す場合もあるとはいえ、それぞれのマシン上では、実行対象プログラムの一部の処理が実行されることになる。つまり、グリッドコンピューティングは顧客に対してアウトソーシングサービスを提供するためのものではなく、使用されていないコンピューティングリソースを利用するためにさまざまなマシンを結合してクラスタ化するための方法ということになるのである。

 また、ユーティリティコンピューティングは、コンピューティングリソースをパッケージ化し、水道会社やガス会社のような従量制や、サブスクリプション形式でサービスとして提供するというものである。この結果、ユーティリティコンピューティングの形態でクラウドを購入することは可能であるものの、一方が他方を意味している関係にはないということになるのである。

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