譲れないもう一つの条件は、同社の生産体制に対応できるかどうかだ。同社のバーコードリーダーの中核であるモジュールは、毎月一定量を作る“見込み生産”体制だ。それに対して、スキャナーやハンディターミナル、スマートフォン機能付きターミナルといった最終製品は、ロットが小さく、受注してから1カ月後に生産するといった“受注生産”になるという。組み立て製造業である同社のそうした生産管理に対応できるERPパッケージが求められていたのである。
「営業体制や会社の体制というレベルでは、どのベンダーも積極的だったが、生産管理の話になると、急に口が重くなるベンダーばかりだった」(藤田氏)
そうしたことから、ERPパッケージの「選択が頓挫しかけた」という藤田氏は、インターネットで検索をしている。この時にInfor ERP LNという解を見つけている。藤田氏は日本インフォアに連絡。その日本インフォアの営業マンがオプトエレクトロニクスに来社した。
「彼は熱心に話を聞いてくれて、生産管理の機能については『今度SEを連れてきます』と明快な返事をくれた。それからSEを交えて数回の交渉を経て契約に至った」(藤田氏)
短期間のプロジェクトを選択
このようにしてInfor ERP LNは採用に至っている。その導入範囲は、部材の購買管理、工程管理を中心とする製造、受注管理の販売管理、在庫管理、請求管理、買掛金管理や売掛金管理などの会計管理、資材計画などを含む企業計画などだ。導入先は本社と芦別の工場、物流センター1拠点、営業所1拠点に決められている。
同社にとって最適なERPパッケージと言えるInfor ERP LNを選択したオプトエレクトロニクスだが、導入支援サービスのLNFS-Jを選択したのはなぜか。藤田氏がこう説明する。
「私を含めて情報システム部門は4人。私以外の3人は業務知識がなかったので、生産管理や物流などの業務部門を連れてくるしかなかった。業務部門は兼業で導入プロジェクトに携わるわけだから、あまり長くはやれなかった」
そうした背景があるために、より短期間に導入プロジェクトを完了できるようにLNFS-Jを選択したのである。この選択について藤田氏は「信じてやってみるしかない」と当時の心境を振り返っている。
LNFS-Jは、世界の製造業4800社のInfor ERP LN導入経験をベースに、製造業に特化した業務フローや主要レポートのひな形、既存システムからのデータ移行ツール、プロジェクト管理ツールなどが含まれている。日本インフォアの笹氏が特に重要だとする業務フローは製造業での10種類の主要業務担当者向けのものとなっている。

また日本インフォアが提供するLNFS-Jは、日本独自で提供されている。これは、日本企業への必須機能が含まれている。LNFS-Jの「J」は“日本独自”という意味が込められている。たとえば会計機能での月次請求書や全銀協支払いデータ、ロジスティックでの納品書や発注書などが日本向けに日本インフォアが作り込んでいるものになる。
「LNFS自体は世界で展開されている導入支援サービスだが、LNFS-Jには、たとえば手形処理といった日本独自のアドオンが含まれている。これは、LNFSが始まる以前から作り込まれていたものだ」(笹氏)
システムに業務をあわせる
ERPパッケージ導入では、実際の業務とシステムをどうやってすりあわせるかが重要なポイントだ。業務にシステムを合わせると、拡張機能の開発が発生することになる。システムに業務を合わせると、業務部門の現場の業務プロセスを変えることになってしまう。こうした問題を踏まえて、藤田氏はERPパッケージの導入について経営層とやり取りしたという。
「経営層とは『一回われわれのやり方を捨てよう』という結論になりました。ERPパッケージは世界中のユーザー企業のいいとこ取りをしているのだから、標準でやってみようということになり、システムに業務をあわせよう、と言ってもらえました」(藤田氏)
オプトエレクトロニクスは、こうしたトップダウンの方針でERPパッケージ導入に伴う問題を解決している。このような経緯でオプトエレクトロニクスは2008年7月に導入プロジェクトを開始して、この2月にプロジェクトは完了したのだ。今回の導入プロジェクトは日本国内を対象にしたものだが、今後は北米や欧州の各拠点に展開していく計画という。
Infor ERP LNというERPパッケージ導入は、オプトエレクトロニクスの経営に対して、どのような貢献をもたらすのか。同社の2009年11月期事業計画には、それが表れている。2009年11月期の期初に棚卸し資産は33億3000万円だが、同期の終わりには20億円にまで低減できると見込んでいる。最終製品が10億9000万円から7億円に、部材が19億4000万円から10億円に、それぞれ低減できると見込んでいる。