4. 承認の欲求
人の欲求というのは、次から次へと生まれてくるものです。コミュニティに属したら、次は「必要な人」と思われたいのです。周りの人から認められて尊敬される存在になりたい。いつも褒められたいのです。褒められることで、自分の価値を確認したいわけですね。「褒められて嫌な人はいない」とよく言いますが、こういう欲求があるから、当然のことなのです。
5. 自己実現の欲求
最後は、自分の可能性を信じて創造的な活動をしたり、自己の成長を求めるという高い次元の欲求になります。この欲求を求めるすべての人が満たされるわけではなく、ここに足を踏み出したばかりに失敗し、すべてを失う人もいます。成功すれば究極の欲求が満たされ、失敗すればそのリスクも大きい。いわゆる起業などがここ当てはまりますね。
日本の場合は失敗を容認する文化が育っていないためか、ここで大幅に足を踏み外してしまうと1から4のすべての欲求を失い、自殺にまで追い込まれる人がいます。また、こうした失敗やその後の転落の例を目の前で見てしまうと、この段階の欲求を求めることが怖くなり、ほどほどの幸せしか求めなくなる人もいます。それはそれで悪くはないのですが、自己の可能性を抑制することにもなります。こうした個々の可能性を抑制することは、日本という国家レベルでみれば大きな損失につながるように思えてなりません。
人間の欲求は人それぞれ
さて、以上の5つの欲求は、最も原始的な1から段階を踏んで5に到達するとも言われますが、現実のケースを考えると必ずしもそうとは限りません。5の自己実現の欲求を満たすがために、すべてをなげうってハングリーに突き進む人もいますし、3の欲求の「愛」だけを求め、安定も安全も、いや生存さえ投げ捨てる人もいます。このような例は枚挙にいとまなく、すべてが段階を踏んで高度の欲求に進むわけではないことがわかると思います。
ただ、上記5つの欲求自体は理解できますよね。この欲求を満たすこと自体が、実は私が連載当初から唱える「人は欲があるから行動する」ということに結びつくのです。その欲の向かう方向が、おおまかに言うと上記の欲求になります。
自分が接する人、例えば上司、例えば好きになった人が「得をした」と思える、つまり喜んでもらえる方向が、これでわかりやすくなったと思います。もちろんこうした欲求はあなたにもあるわけですから、その欲求と現実とをどのように折り合い付けていくのかが、生きる術でありテクニックになります。
今後の話でも、この5つの欲求を念頭に置きながら考えていただけると理解しやすくなると思います。

筆者紹介
田代真人
マイ・カウンセラー 代表取締役。九州大学工学部機械工学科卒業後、朝日新聞社を経て学習研究社へ。ファッション女性誌「ル・クール」編集者の後、主婦向け実用雑誌 「おはよう奥さん」の創刊メンバーとして、主婦の悩みを解決する「悩み相談センター」を開設する。その後ダイヤモンド社へ移籍し、「ダイヤモンド・ブレイク!」「ビットビジネス」など数々の雑誌を編集長として創刊した後、ビジネス開発本部副部長に就任。2006年、これまでの編集経験から「人々の悩みを解決したい」との思いに至り、マイ・カウンセラーを設立。2007年ダイヤモンド社を退社し、メディアプロデュース業のメディア・ナレッジを創業すると共に、マイ・カウンセラーの代表取締役に就任する。
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