デジタル化の行き着く先、それは「アナログ」--田代センセーのメンタルテクニック(16)

田代真人(マイ・カウンセラー)

2009-05-28 08:00

 みなさんこんにちは! マイ・カウンセラーの田代です。不安や悩みを自己解決するメンタルテクニック。以前、悪いことをする人間の存在も実は科学を発展させる理由のひとつになっているというお話をしました。科学の発展といえば、いまの世の中は、すべてデジタルに向かっているかのようです。インターネットの世界は、まさしくこのデジタルがなせるワザとも言えます。ただ私は、これからの世界、逆にアナログへシフトしていくと思っています。いえ、懐古趣味に走ってしまうというわけではありません。

 ちょっと考えてみてください。身の周りの「キカイ」は、あまりにも人に失礼だと思いませんか? パソコンにしても、使おうと思ったらまずキーボードを使えなければなりません。最近ハヤリのiPhoneも、結局はソフトキーボードと呼ばれる画面に現れるキーボードで入力しています。携帯電話もそうですね。ほかにも人間が努力しなければ使えない電化製品はいくらでもあります。これが、情報機器を操ることができる人とできない人との間に情報格差、就業格差、収入格差を生み出す「デジタルデバイド」の原因となっています。

 しかし、1990年代の終わりごろからでしょうか、そういう環境を緩和してくれる実用的な仕組みや技術が少しずつ登場しているのも確かです。音声入力できるアプリケーションなどは、その最たるものでしょう。最近は変換精度も上がってきて実用に耐えられるレベルに近づいているようです。

 そもそもデジタルで信号を処理するには、人間というアナログの権化を、どこかで一度デジタルに変換してあげなければなりません。その代表的な機器がキーボードです。キーを打つことによって、人の考えをデジタルに変換できるのですね。また、モニターも逆の機能を持つ変換器です。コンピュータで処理されたデジタル信号を人間というアナログな生き物が理解できる形で表示してくれます。これらの機器、アナログとデジタルの橋渡しをしてくれる装置や仕組みを「マンマシンインターフェース」といいますが、今後、技術革新が進むと、人間の思考をデジタルに変換したり、デジタルを人間が理解しやすいようにアナログに変換したりという、アナログとデジタル間の変換インターフェースがどんどんアナログに近づいていくと思うのです。

 人が人に話すように、マイクに向かって話す内容が自動的に入力できるといったアプリケーションが完璧になれば、言葉を覚えたばかりの子供でもお年寄りでもパソコンに入力できるようになります。すでに実用化もされていますが、パソコンが話してくれれば目が不自由な人でもパソコンが使えます。

 そのようなマンマシンインターフェースの要がロボットです。

 最近進化が著しいロボットですが、走ったり踊ったりするものも出現し、私が大学の研究室で原始的なサーボ技術を研究していた時代からすると隔世の感があります。私は、このロボットがもっとも完成されたマンマシンインターフェースになると思っています。

 人間に伝えるようにロボットに伝えれば、デジタルに処理してくれて保存や加工をしてくれる。ロボットの表面にセンサーが付けば、親が子供の熱を確かめるように、おでこを触って体温が計れる。いや、触ることもなく、毎日ロボットに挨拶するだけで、ロボットの目からこちらの体調を調べてくれたり、「おはよう」と言っただけで臭いを感知して「夕べは飲み過ぎましたね。まだお酒臭いですよ」などと忠告してくれたりする。ファッションチェックなどもしてくれるようになるかもしれません。お出かけ前に自慢の洋服でコーディネートしたとき、「どう?」と尋ねると「赤とグレーの組み合わせは派手じゃないですか? 赤よりピンクのほうがいいですよ」というアドバイスも可能でしょう。

 このようにデジタル機器は、今後ますます人が安心するアナログなもの、つまり人間に近づいていくと思います。人が意思伝達をする方法に限りなく近い方法でいろいろなキカイを操れるようになっていくのです。人間にとって都合のいいものを人間が作り出すわけですから、それも当然です。

 鉄腕アトムではないけれど、究極の科学の進化はやはり人間を作り出すことでしょうか。しかし人間自体の仕組みもまだまだ解明されていない部分が多いわけですから、そのときは永遠にやってこないのかもしれません。だからこそ私たちには夢があるともいえるのでしょう。そのような夢こそが、私たちが生きる意味にも通じ、小さな悩みなど吹き飛ばしてくれることだと思っています。

田代真人
筆者紹介

田代真人
マイ・カウンセラー 代表取締役。九州大学工学部機械工学科卒業後、朝日新聞社を経て学習研究社へ。ファッション女性誌「ル・クール」編集者の後、主婦向け実用雑誌 「おはよう奥さん」の創刊メンバーとして、主婦の悩みを解決する「悩み相談センター」を開設する。その後ダイヤモンド社へ移籍し、「ダイヤモンド・ブレイク!」「ビットビジネス」など数々の雑誌を編集長として創刊した後、ビジネス開発本部副部長に就任。2006年、これまでの編集経験から「人々の悩みを解決したい」との思いに至り、マイ・カウンセラーを設立。2007年ダイヤモンド社を退社し、メディアプロデュース業のメディア・ナレッジを創業すると共に、マイ・カウンセラーの代表取締役に就任する。
ご意見、ご感想は mc-info@mycounselor.jp まで。

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