インテルと内田洋行は5月27日、学校でのICT普及促進に向けた「児童1人に1台のPC」プロジェクト第2弾を開始すると発表した。都内の公立小学校に学習用に特化したノートブックPCを提供し、授業でPCを活用するための実証実験を行う。
両社が2008年に開始した同プロジェクトの第1弾では、千葉県柏市の公立小学校2校の児童に小型ノートブックPCを提供し、国語と算数の学習においてPCを取り入れた授業の実証実験を行っている。この実験に対するアンケート調査の結果では、「PC導入後に総合漢字テストの平均点が上昇した。特に70〜80点台の児童では約60%の成績が向上している。また、半数以上の児童は学習が楽しかったと回答したほか、教師の70%が児童の学習意欲と授業の効率化が向上すると回答した」と、インテル 代表取締役社長の吉田和正氏は説明する。
一方で、この実験では「ICT普及における課題も見えてきた」と吉田氏。それは、紙と鉛筆が主流となる日本の学習シーンとの親和性を高めるために、自然な手書き入力ができるタッチパネル端末など学習に適した教育専用のPC端末が必要だということや、授業内容に合わせたデジタル学習コンテンツが必要であること、またネットワークや設備の運用サポート体制を整えなくてはならないことなどだ。
こうした意見や課題を踏まえ、両社はプロジェクト第2弾として東京都中央区立城東小学校にて実証実験を開始する。城東小学校は、中央区の小学校における教育課題について先行的に研究、開発を行うための「中央区フロンティアスクール」指定校だ。実験の対象となるのは4年生から6年生までの児童26名で、インテルが教育向けに開発した「インテル クラスメイト PC」を配布する。インテル クラスメイト PCは、インテルのモバイル向けプロセッサ「Atom」を搭載したタッチパネル機能つき小型ノートブックで、ワイヤレス接続機能や長時間のバッテリー駆動、耐水性のキーボード、堅固な耐衝撃設計などの特長を備えている。
今回のプロジェクトでは、柏市で実験している国語と算数に加え、2011年度から小学校5〜6年で必修化される英語を対象授業に追加、英語学習のソフトウェアとして内田洋行が提供する「ATR CALL BRIX」を使用する。ATR CALL BRIXは、児童がヘッドセットを使って発した英語音声を認識、評価できるソフトウェア。実証実験では、同ソフトが小学校での外国語活動で有効に使えるかも検証する。国語と算数の学習アプリケーションは、2008年度に続き「小学館デジタルドリルシステム」を使用する。
内田洋行 代表取締役社長の柏原孝氏は、「学校を取り巻く環境が変化すると同時に、ICTも進化している。現状では普通教室における校内LANの普及率は約60%に過ぎないが、いずれ100%普及する日も近い。内田洋行は、過去に通商産業省(現在の経済産業省)と文部省(現在の文部科学省)が実施した初等中等教育での情報活用高度化を目指した『100校プロジェクト』にも参加したほか、電子黒板やデジタルコンテンツ作成にも取り組むなど、教育現場のICT化に古くから貢献してきた。児童が授業でPCを活用するにはさまざまな課題もあるが、今回の児童1人に1台のPCプロジェクトに積極的に取り組むことで、未来の教育への突破口となればいいと考えている」と述べた。
今後両社は、柏市と中央区の小学校で行った実証実験を総合的に検証し、児童1人に1台のPCを実現するために最適な教育用PCのガイドラインを検討するほか、教育用PCの開発、販売、流通の整備といったビジネスモデルの構築を支援し、教育現場におけるICT普及の環境作りに取り組むとしている。