オラクルと富士通、データベースでのILM機能の実証実験結果を発表

渡邉利和

2009-06-16 20:18

 ETERNUS筐体内に高速なFC(ファイバチャネル)接続のHDDと、安価なSATA(シリアルATA)接続のHDDによる階層型ストレージシステムを構築、ILMによってFC HDDからSATA HDDへのデータ移動の可否と、パフォーマンスに与える影響などを検証した。両社にとって、国内で実施するILM関連の検証としては初の取り組みだという。

 ILMでは、新しく頻繁にアクセスされるデータは高速で高価、かつ小容量のストレージに置き、データが古くなってアクセス頻度が下がったデータは低速で安価、大容量のストレージに移動、さらに古くなったものはテープなどにアーカイブというデータのライフサイクルに応じた階層ストレージの割り当て管理を自動化する。ただし、従来のILMはファイルのタイムスタンプを手がかりに、ファイル単位やファイルシステム単位で実行されていた。RDBMSが一括で管理するデータベースに格納されたデータに対して、外からその鮮度やアクセス頻度を把握して自動的にデータを移動させることはできないため、データベース内のデータに対してILMを実装することは困難だった。

富士通 富士通 ストレージシステム事業本部 ストレージシステム事業部 事業部長の有川保仁氏

 富士通 ストレージシステム事業本部 ストレージシステム事業部 事業部長の有川保仁氏はこの状況を踏まえ、「できていそうで実はできていなかったデータベースのILMが実現できた」と語った。また、オラクル 常務執行役員 システム事業統括本部長の三澤智光氏は、「データベースのILMは、Oracle Database 11g R1で実現した技術で、他のデータベースにはないOracleだけの技術だが、実際のハードウェアと組み合わせた環境で確実に動作するかどうかはまだ実証されてはいなかった」とし、今回の検証作業の意義を明確にした。

オラクル オラクル 常務執行役員 システム事業統括本部長の三澤智光氏

 検証作業では、Oracle Database 11gの「Oracle Partitioning」の機能で、レンジパーティションによりデータを時系列でパーティショニングしておき、移動した。移動の手法は、Oracle Partitioningの機能である「Move Partition」を使う場合と、ETERNUSの機能である「RAID migration」を使う場合との両方を検証している。

 通常の業務アプリケーションの動作を継続したままバックグラウンドでデータを階層移動するという想定では、Move Partitionによる移動中には業務アプリケーションのレスポンスタイムが最悪で5倍に劣化する場合もあったが、平均的には2倍以下に収まっている。Move Partitionのメリットとしては、データ圧縮を併用することでストレージ容量の削減を同時に実行できるなど、柔軟性が高いことが挙げられている。

 一方のRAID migrationでは、ハードウェア側の機能であるLUNに格納されたデータを別のLUNに移動できる。この場合、ストレージの論理ボリューム単位でのコピーとなるため、あらかじめ移動対象となるパーティションが特定の論理ボリュームに書かれるよう設定する必要があるが、データの移動に関してはデータベースサーバ側のリソースは全く使用せずバックグラウンドで処理が完了するため、業務アプリケーションへの影響がほとんどない上、コピー完了までの時間も予測可能になるなど、ストレージ管理者にとっては分かりやすい機能となっている。

 これらの結果から両社は、「RAIDマイグレーション方式は、ILMによるデータ移動の業務絵の影響を極力抑えたい場合に有効」「MOVE PARTITION方式は、ILMのフレキシビリティを求める場合に有効」と報告している。

 今後両社は、富士通プラットフォームとOracle Database 11gによるデータベースILMソリューションの導入を支援するために、業務データベースシステムの運用環境のアセスメントや、システム設計、運用設計、構築といったメニューを持つ導入支援サービスを提供する予定だ。


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