日立ソフト、「SecureOnline 出前クラウドサービス」発表--導入負担を軽減

日高彰

2009-07-03 00:35

 日立ソフトウェアエンジニアリング(日立ソフト)は7月1日、ブレードサーバやストレージなどを収容したラックを顧客のデータセンター内にレンタルする「SecureOnline 出前クラウドサービス」を9月1日より開始すると発表した。

 地方銀行クラスの金融機関、製造業、流通業などでの採用を想定しており、利用料は38Uラックを利用する「1ラックサービス」で月額100万〜400万円程度、16Uラックを利用する最小構成の「プチラックサービス」で月額25万〜100万円程度。

 社内サーバの統合やクライアントの仮想化を行うため、仮想マシンを提供するためのいわば「プライベートクラウド」設備に対する需要が高まっている。今回の出前クラウドサービスは、仮想マシン提供用のブレードサーバ、管理用サーバ、SANストレージ、スイッチ、遠隔保守用のハードウェア監視装置などを日立ソフトが1ラック内に構築し、運用手順書とセットにして丸ごと顧客にレンタル提供するもの。ネットワークや仮想化ソフトウェアなどの設定が済んでいるので顧客の導入作業負担が軽くなり、費用は月額料金として支払えるので初期投資も抑えられるのが特徴。

 日立ソフトでは2007年1月より「SecureOnline 統制IT基盤提供サービス」の名称で、同社データセンターで稼働する仮想マシンをVPN経由で貸し出す月額制サービスを提供していた。しかしこのサービスの場合、仮想マシンが顧客企業の外で稼働することになるため、業務データを社外に置くことが禁止されているような企業では利用できなかった。

 出前クラウドでは、従来の統制IT基盤提供サービスで使用されているラックと同じ設備を顧客のデータセンター内に設置するため、顧客は社内設備と同じセキュリティポリシーで運用することができる。

出前クラウドは従来売り切りだった設備と同じものを社内に設置可能で、しかもレンタルのため課金は月額制であるところがメリット 出前クラウドは従来売り切りだった設備と同じものを社内に設置可能で、しかもレンタルのため課金は月額制であるところがメリット

 ハードウェアは38Uラックの「1ラック」に加え、16Uラックの「ミニラック」「プチラック」の3モデルから選択可能。稼働可能な仮想マシン数はサーバ利用ならそれぞれ60マシン、24マシン、15マシン、クライアント利用ならそれぞれ200マシン、80マシン、50マシンを想定している。

 月々の料金はラック毎に設定される基本料と、稼働させる仮想マシン数に応じて支払う仮想マシン利用料の合計となる。使用する仮想マシンが少ない間は仮想マシン利用料を抑えられるので、既存マシンから仮想マシンへの移行の初期段階ではすべてのコストを支払わなくても済むというメリットもある。

用意されるラックは3モデル。「1ラック」「ミニラック」ではブレードの増設による仮想マシン数の追加にも対応する 用意されるラックは3モデル。「1ラック」「ミニラック」ではブレードの増設による仮想マシン数の追加にも対応する

 同社では、これまで手がけてきたサービスのノウハウや設備をそのまま転用できるので、一般的なリース契約に比べて安くクラウド設備を提供することが可能になったとしている。レンタル期間が終わって顧客から返却された設備については、従来の統制IT基盤提供サービス用に使うことができるので、同社が不良資産を抱えてしまうリスクも小さいという。また、仮想マシンの使用数を問わず月額固定料金とする契約形態をとることも可能としている。

パブリッククラウドを統合するゲートウェイサービス

 このほか同社では、パブリッククラウドのサービスと社内システムを連携させる「SecureOnline SaaSゲートウェイサービス」を今秋の提供開始に向けて準備中であることを明らかにしている。

 グループウェアやCRMなどでは、社内にシステムを持たずインターネット経由でパブリッククラウドのサービスを利用する事例が増えてきたが、パブリッククラウドに蓄積されたデータを社内システムとどのように連携させるかが課題となっている。外部連携用のAPIを用意しているクラウドサービスも多いが、サービスごとにAPIが独自仕様となっている、特定のポートを社外に開放する必要があるといった点が、実際の使用にあたっては問題となる。

 これを解決するのがSaaSゲートウェイサービスで、第一弾としてSalesforce.comとの連携が可能となる予定。日立ソフトのデータセンター内にSalesforceとのゲートウェイとなるサーバを用意し、顧客の社内システムに代わってデータのやりとりを行う。社員がSalesforceに営業活動データなどを入力すると、それを通知するPingがゲートウェイに向けて送信される。Pingを受信したゲートウェイは、Salesforceに加えられた変更を取得し、VPNで接続されている顧客企業のデータベースへ変更を即座に反映する。

 これによって、顧客企業ではウェブブラウザを使わずにSalesforce上のデータにアクセスすることが可能となり、他の業務システムとの連携もとりやすくなる。従来は顧客企業の情報システム部門が自前でAPI連携の新規開発を行い、ファイアウォールなどの設定も変更する必要があったが、日立ソフトがゲートウェイ部分を担当することで、顧客側のシステムに大きな変更を加える必要がなくなる。

SaaSゲートウェイサービスがクラウドと社内システムの間に入ることで、既存の社内システムに大きな変更を加えなくてもクラウドとの連携が可能になる。ファイアウォールのポートを解放できない場合、従来はリアルタイムの反映が難しかったが、それも解決 SaaSゲートウェイサービスがクラウドと社内システムの間に入ることで、既存の社内システムに大きな変更を加えなくてもクラウドとの連携が可能になる。ファイアウォールのポートを解放できない場合、従来はリアルタイムの反映が難しかったが、それも解決

 日立ソフトでは今後、Salesforce.com以外にも対応サイトを増やし、複数のクラウドに散在するデータをひとつのシステムに統合するソリューションとしてSaaSゲートウェイサービスを展開する考えだ。

Salesforceに営業活動情報が入力されると即座に社内データベースにも反映されるので、データベース接続機能などを利用してExcelなどにも簡単に情報を取り込むことができる Salesforceに営業活動情報が入力されると即座に社内データベースにも反映されるので、データベース接続機能などを利用してExcelなどにも簡単に情報を取り込むことができる

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