#2:サービス履歴を提示する
サービスおよびサポートの具体的な内容を提示した後でも、顧客がメンテナンス契約の締結に難色を示した場合、あらためて時間を取って顧客のサービス履歴を見直してみるべきである。顧客が過去1年、あるいはそれ以上の期間にわたって、あなたの会社に緊急修理の電話サポートや、故障時の出張修理を依頼しているのであれば、1年間のコストを集計したうえで、月平均コストを求めてみるとよい。たいていの場合、結果のコストは平均的なメンテナンスサブスクリプション契約を締結した場合よりも高くなっているはずである。この事実を顧客に(巧みな方法で)指摘するのである。
得意顧客がメンテナンス契約への署名に難色を示した場合、筆者はその顧客に対する過去1年分の請求書を見直すことにしている。そういった顧客はたいていの場合、メンテナンスサブスクリプション契約を締結していれば防げたはずの障害(サーバのデータパーティションに空きスペースがなくなったというケースや、電子メールデータベースの容量が上限を超えたというケースなど)のせいで、サブスクリプション料金よりも高いコストを支払っているものなのである。また、プロアクティブサービスではコストを低減できないケース(例えば、落雷によるハードウェアの破損や、製品ライフサイクルの終了に伴うパフォーマンス問題といったトラブル)については、出張料金が発生せず、サービス料金にも割引が適用されることで、どれだけの経費が節減できるのかを顧客に説明するようにしている。こういった計算結果を提示することで、メンテナンス契約の締結に難色を示し続けていた顧客の説得に成功することも多いのだ。
#3:予期せぬシステム停止によって発生するコストを洗い出す
契約の具体的な内容を示したり、サービス履歴(および関連費用)を提示してもなお、サービスおよびメンテナンス計画の利点に納得してもらえない場合、データの損失や、予期せぬシステム停止によって発生するコストを洗い出してみるべきだろう。
CompTIAが2008年に発表したレポートによると、スパイウェアに感染した場合、通常は問題の解決までに2.5日を要するという(関連英文記事)。さらに、システム停止によって生じる損失も莫大なものとなるのである。CompTIAの統計によると、中小企業の社員はスパイウェアを報告するまでに平均18時間を無駄にし、損失額の合計は8000ドルにも上るという--しかも、このコストには逸失利益が含まれていないのである!(スパイウェアの感染は、予防保守を行うことで避けることが可能なのである)。
Ontrackが2001年に発表した「Cost of Downtime Survey Results」(システム停止時のコストに関する調査結果)によると、米国の企業がデータの喪失によって被る損失額は1年当たり平均120億ドルにも上るという。メンテナンス計画では、確実なバックアップ手順を策定しておくだけではなく、日々のバックアップ運用を監視し、バックアップが適切に行われ、すべての重要データが遠隔地で安全に保管されていることを確認するということも重視すべきなのである。また、National Archives & Records Administrationによると、データセンターの障害によってデータに10日以上アクセスできなくなった企業のうち、93%は1年以内に破産を申請することになるという。
ITにおけるメンテナンスおよびサービス計画の真の重要性を顧客に認識してもらうために、顧客を脅すという戦略を採ることはお勧めしないものの、上記は実際の統計データなのである。どんなハードディスクも故障するのだ--それは時間の問題なのである。また、RAMチップの欠陥が発覚することもあり得る。あるいはマザーボードとディスクコントローラの相性が悪くなっていくこともあり得る。さらに、電源ユニットが昇天することもあり得るのだ。