負荷と手間をかけないソフトで人材不足に勝つ--トレンドマイクロの中小企業向け戦略 - (page 2)

大川淳

2009-09-17 08:00

 最新版となるBiz 6.0には、「スマートスキャン」機能が搭載されている。このスマートスキャンは、トレンドマイクロのクラウドサービスである「スマートスキャンサーバ」が、不正プログラムのパターンファイルの更新を逐次継続し、導入企業のクライアントPCやサーバ内で疑わしいと判断されたファイルを検出した場合にだけウイルス検索を実行するという仕組みだ。この機能で「企業内のクライアントPCにかかる負荷を減らす」(同氏)ことができる。

 またBiz 6.0に搭載されている「URLフィルタリング」機能は、業務上閲覧する必要がないと判断されるウェブサイトへのアクセスを遮断するほか、フィッシングサイトやウイルスなどを含むサイトへの接続をブロックする。さらに、クライアントPCの負荷が少ない時にウイルス検索を実行する「スキャンパフォーマンスコントロール」も、中小企業の課題に応えた機能と言える。そのほかに新しい脅威が特定されるたびにアップデートを自動実行する「スマートフィードバック」などの機能も搭載している。

 運用管理では、管理画面を改善することで、クライアントPCやサーバのウイルス感染状況やライセンスの有効期限切れなど、社内のセキュリティ状況を直感的に把握することが可能になった。「中小企業でセキュリティ対策を担当している方は、その会社で最もITに詳しそうな人物というのが一般的なようだが、中には一番若いとの理由で任されている例さえある。Biz 6.0は、ITリテラシーがそれほど高くなくても操作が容易にできる」と、坂本氏は運用管理での工夫の背景を話す。

負荷のかからない“バンドル”作戦

 中小企業に特有とされるコストの課題に、同社は次のように考えている。

 「セキュリティ対策は、利便性を下げてしまいかねないとの一面がある。当社のようなベンダーとしては、労働生産性を下げず、実績が上がるように支援していかなければならない。セキュリティシステムを導入したからこそ、ビジネスが伸びたというようにしていきたい。たとえば、電子商取引サイトであれば、サーバの安全性が証明されたために、ユーザーの安心感を得られ、業績向上に結びつく」(坂本氏)

 また「大手の場合はIT予算の範囲内で賄うが、中小では相当の制約がある。中小で特に難しいのは、セキュリティ対策費はIT予算とみなされない」(同氏)という問題もある。セキュリティ対策が生産性や効率性の向上には直接的に結びつくことがないからだ。

 そこで「最終的に望ましいのは、いつの間にか対策は終わっているという形」(同氏)だ。たとえば、エレコムが提供するNASにトレンドマイクロのセキュリティ製品をバンドルされることで、このNASを導入すると、自動的にセキュリティ対策が講じられることになる。同様に、デルのサーバにバンドルということもできる。「中小企業はまずファイルサーバなどを導入すると、セキュリティ製品も備えられている」(同氏)というような手法が考えられる。

“士”との協力関係を維持

 同社ではさらに、中小企業から受け入れやすい環境作りを検討している。「中小向けのビジネスでは、ベンダー側からチャネルパートナーにどのように販売してもらうかという点が戦略として重要になる。企業から指名を受け、購入しやすいところで購入してもらう。製品への十分な理解を得て、導入してもらうようにすることが最善」(同氏)だからだ。その具体策の一つとして、坂本氏は新たな提携関係の構築を検討している。

 「製品への理解を深めるため、ウェブを用いたプロモーションなどが実行されることが多いが、これからは、中小のビジネスをよく理解している中小企業診断士や公認会計士、税理士、ITコーディネーターなどと連携し、情報交換や支援をして、啓蒙活動やプロモーションをしていくことが一層重要になる。現状で中小企業への販路として多い量販店や事務機器ベンダーとの協力関係も維持していきたい」(同氏)

 中小企業のセキュリティ製品導入の鍵を握るのは、やはり経営層の認識だ。坂本氏は「経営者層への訴求としては、セキュリティ面での整備が遅れると、ビジネスチャンスを逸してしまう危険性があることを伝えたい。大手が中小に発注する場合、セキュリティ対策の有無が、重要な評価基準になってきている。このようなことが、利益に大きく響いてくることも考えられることをきちんと話していく」と経営層の認識が要であるとしている。

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