2007年から富士通が取り組んできた「ソフトウェアのものづくり革新」における「設計の革新」の一環として、要件定義の作業プロセスやドキュメントの標準化、それらの普及活動、約300人規模の要件定義の専門家であるビジネスアーキテクト育成などの成果がある。

富士通 常務理事でテクノロジーサポートグループ 副グループ長 八野多加志氏は、「失敗プロジェクト撲滅への取り組みは、今年4月に新設したテクノロジーサポートグループによって継続的に実施している。失敗するプロジェクトを分析すると、そもそも失敗する商談を獲得してしまうこと、上流工程における要件確定の不備が原因となっていることが多い」と述べる。
要件定義が曖昧なまま設計工程に移行してしまうと、設計工程でどうシステムを開発すればいいのかが不確かになり、開発の遅延などにつながる。また、設計者が思いこみや誤解したまま開発が進むと、テスト段階で異なるシステムが開発されていることが指摘されて差し戻しが発生、コスト増や期限遅れなどにつながる。
こうした富士通の経験を踏まえて体系化したのが、新要件定義手法といえる。
「システム開発の途上で、人事異動や組織変更などによって要件を出した人が不明確になる場合もある。今回の新要件定義では、誰が要件を出したのかにも踏み込んでおり、システム開発の過程で見直しが入った場合に、誰に聞いたらいいのかといったことにも範囲を広げている」(八野氏)という。
ユーザーに知ってもらいたいこと「要求と要件は異なる」
富士通 システム生産技術本部 SI生産革新統括部 統括部長代理の若杉賢治氏は、「要件定義の品質を高めることで、システム開発におけるQCD(品質、コスト、納期)の向上を図り、さらなる顧客満足度向上を目指す。品質を高めながらコストを削減できるものになる」と意気込みを見せる。