日本オラクルは、基幹業務アプリケーション最新版「PeopleSoft Enterprise 9.1」を発表した。人材管理の分野をはじめとした新機能を追加するとともに、ユーザー画面を一新し、使いやすさの向上を図っている。また、運用と保守など、システムのライフサイクル管理も拡充された。
スケジュールとしては、2010年1月に、人材管理アプリケーション「PeopleSoft Enterprise 9.1 Human Capital Management」を投入、その後、2010年第1四半期中に、CRMアプリケーション「PeopleSoft Enterprise 9.1 CRM」、財務会計とSCMアプリケーション「PeopleSoft Enterprise 9.1 Financials and Supply Chain Management」を順次出荷する予定だ。
日本オラクル常務執行役員、アプリケーション事業統括本部長の保々雅世氏は「PeopleSoft Enterprise 9.1は、米Oracleが2005年にPeopleSoftを買収して以来、3回目の改版となるが、今回が最も大きく変化している」と述べ、人事関連をはじめ、統合経営、資産効率化など、1350の新機能を盛り込んでいると説明した。
国内において「PeopleSoft Enterprise」製品は、人事関連のアプリケーションに対する需要が大きいが、今回の「PeopleSoft Enterprise 9.1 Human Capital Management」でも、特にタレントマネジメントについての機能強化に焦点が当てられている。
タレントマネジメントとは、企業内の従業員としての個人、また、彼らが構成する組織の生産性を高め、ビジネスに必要なスキルの習得を促し、優秀な人材の維持、能力開発を、企業が全体として統合的に、いわば、事業戦略の一環として推進する、人材管理の手法であるとされる。
タレントマネジメント関連機能の大きな特徴としては、企業内のさまざまな役職、任務の後任者選定の計画を効率化する「後任計画(Succession Planning)」が追加された。この機能は、人材の配置を最適化することで、事業を遅滞なく円滑に遂行できるようにすることを目指すものだ。従業員各自を、適性にあった職務に配置することが主目的といえるが、主要な役職の人事に限らず、組織体としての企業全体にわたり、従業員の病気、転職など何らかの理由により、急な欠員が生じてしまう場合、迅速に人員補充ができるようにしておくことも、危機管理のうえで大きな役割となる。
この機能では、横軸を「成果」、縦軸を「潜在能力」として、それぞれ3段階、計9つのマトリクスの中で、各人材がどこに位置づけられるかをプロットし、各人材の現在のスキルレベルと目指すべき方向性を論理的に表示する「9ボックスレイティング」と呼ばれる評価手法を用いる。これにより、企業全体や組織、また役職や役割に必要な人材像を客観的に把握し、その人材像に必要なスキルとそのスキル習得に必要なトレーニングなどを効果的かつ迅速に判断し、提案することができるという。
また、技術的な面では、操作性の改善が重視され、ナビゲーションメニューの改良、マウスオーバーによるポップアップ、先読み入力など、ユーザーインターフェースを使いやすくする点に注力している。さらに、セキュリティ強化、管理コスト削減にも配慮しているほか、オープン性重視の観点から、他社データベースとの連携も強化されているとする。
タレントマネジメントのソリューションへの需要は「数年前まで、国内にはあまりなかった」(アプリケーション事業統括本部HCM本部、シニアマネジャーの安井清一郎氏)という。
「人材管理のための取り組みは、さまざまな形態で行われてきたが、個別的な業務の遂行に力点が置かれたり、人材情報が業務ごとに分散してしまうなど、部分最適はできていても、全体最適にはなっていなかった。そのため、手詰まり感が出てきている」(安井氏)
安井氏は「今回の製品は、企業の抱えるそのような課題に応えるもの」と話す。同社では、タレントマネジメントに対処できるソリューションの導入を考える企業が今後さらに増大すると見込んでおり、需要拡大に期待をかけているという。
PeopleSoft Enterprise Human Capital Management 9.1のライセンス提供の参考価格は、社員100人に対し201万円から。