Vblockの使用例として雨堤氏は、あるケースを説明する。そのケースは、500人の営業マンを抱える企業を買収したというものだ。Vblock上に500個の仮想デスクトップを作成して、新しく加わる営業マンが企業情報やアプリケーションにアクセスできるようにし、また新しい500人に対応するだけのデータベース容量を増強するとともに、500個分のメールボックスを新規に作成するといったものだ。これらのシステム対応は、Vblockでテンプレートを活用することで、短期間にシステム構成のプロビジョニングを展開できるとしている。
Vblockの運用管理ツールにはEMCが提供する、物理と仮想の両環境を管理する「EMC Ionix Unified Infrastructure Manager(UIM)」を活用する。Ionix UIMがVblockとユーザーを結ぶ統合インターフェースになる。物理環境と仮想環境の運用管理ツールは、EMCのほかにシスコやヴイエムウェアからも提供されているが、VblockはIonix UIMを活用する。
今回のVblockは、プライベートクラウドを導入したい企業も対象にしているが、コンサルティングや調査、アドバイスなどのプロフェッショナルサービスも提供される。
プライベートクラウドの技術動向を調査、ビジネスにもたらす価値をアドバイスする「エグゼクティブ・アドバイザリサービス」、プライベートクラウドのアーキテクチャや仮想デスクトップをアドバイスする「アーキテクチャ・アドバイザリサービス」、クラウドコンピューティングを実現するための戦略と戦術を立案する「ストラテジサービス」、Vblockでのプライベートクラウドの詳細設計、導入や運用など具体的に支援する「デザイン・導入支援サービス」――の4つを提供する。
Vblockの価格は非公開であり、パートナー企業各社から提示される。パートナー企業は現段階で、アクセンチュア、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、新日鉄ソリューションズ、東芝ソリューション、日本ビジネスシステムズ、ネットマークス、ネットワンシステムズ、ユニアデックスの8社。Vblockを提供するパートナー企業について、EMCジャパン代表取締役社長の諸星俊男氏は「今後、どんどん増やしていきたい」と話している。
技術支援は仮想チームが対応
シスコとEMCジャパン、ヴイエムウェアは日本市場でのVblock提供に関連して、検証設備を設立している。検証設備はVblockの共同検証や障害解析なども展開する。米市場ではVblockを提供する主体としてAcadiaが存在するが、日本国内はAcadiaのような企業はなく、提供主体は各パートナー企業だ。
Vblockの技術支援をシスコとEMCジャパン、ヴイエムウェアの3社で展開する。この3社は、Vblockの技術支援で仮想チームを立ち上げている。仮想チームは、パートナー企業から寄せられるVblockの技術的問い合わせなどの情報をすべて共有するという。パートナー企業が3社のうちのどこに問い合わせても、すべてを共有できるとしている。
今回Vblockを専門にする企業、米市場でのAcadiaに相当する企業、あるいは技術的に支援する拠点を立ち上げなかったことについて、シスコ社長のEdzard Overbeek氏は、「一つの拠点を設置するのは、拡張性がない。仮想チームは、必要な人員を動的に割り振ることができる。また必要にあわせて柔軟に最適化できるというメリットがある。一元化されたものより仮想チームの方が柔軟に対応できる」と、仮想チームのメリットを強調している。
価格を公開していないVblockだが、構成する製品をバラバラに買うより安くなり、コストメリットがあるという。導入後の運用段階のことを踏まえると「TCO(総所有コスト)で考えると安くなる」(Overbeek氏)と説明、またパートナー企業による付加価値が加えられることでもコストメリットがあるとしている。
ヴイエムウェア代表取締役社長の三木泰雄氏は、Vblockの存在意義としてプライベートクラウドとパブリッククラウドを連携させるものと説明している。