ソーシャルメディアは企業の構造改革を促進するか
企業の透明性については、「ウィキノミクス」の著者であるDon Tapscott氏が、GartnerのフェローであるHoward Dresner氏と2005年に対談した時の言葉を引用してみたい。
「企業における透明性とは、単に財務情報を開示するということではなく、企業の実績、業務、活動、また企業価値までを、顧客や従業員、パートナー、株主、コミュニティなどといった、その企業に関わる全関係者が把握できる環境を指している。利害関係者のコミュニティの重要性と、今後、具体的に企業が行うべきこととして、まず、透明性というのが抽象的な概念や単なる理論ではないことを理解する必要がある。透明性とは組織の一形態であり、これこそが利害関係者の輪やネットワークから常に注目をされている部分だと言うことだ。だからこそ企業は異なるアプローチを考えることが必要だ。まず利害関係者のコミュニティを分析診断し、その結果に基づき協力関係を構築し、彼らの利益と行動が自社の利益と一致するようにしなければならない。また、企業を変え、理解を深められるのは利害関係者だけではない。利害関係者の利益を知り、それを実際に自社の利益と一致させることができると理解したとき、企業自体も変わる」
Tapscott氏のこの言葉と識者たちの予測とを併せて考えれば、企業が透明性を重視することは、企業が自らの変革を重視することにつながるものだといえる。そして、ソーシャルメディアは私たちの生活に組み込まれていくと予測する識者の言葉を借りれば、「2009年はソーシャルメディアを学んだ年、2010年はソーシャルメディアをよりうまく活用する年」ということになる。産業構造や業界構造の変化による影響のもと、企業の構造改革の気運が高まる中で、ソーシャルメディアが果たす役割は、さらに拡大の気配を見せている。