治験促進センターとNEC、クラウド型の新統一書式入力支援システムを共同開発--治験事務の効率化に寄与

大川淳

2010-03-20 09:30

 社団法人日本医師会治験促進センター(以下、治験促進センター)とNECは共同で、治験の新統一書式入力支援システム「カット・ドゥ・スクエア(愛称)」を開発した。このシステムは、治験にかかわる事務業務をウェブサービスとして共有できる、業界横断の情報共有基盤となるクラウド型サービスだ。治験促進センターは3月19日に、製薬・医療機器企業や医療機関をはじめ、治験の関係者に向けて、新システムによるサービス提供を開始している。

 治験とは、薬剤、医療機器などの有効性や安全性について調べ、厚生労働省から承認を得るために行われる試験のこと。NECによれば、従来の統一書式入力支援システムは、治験促進センターのウェブサイトから治験の関係者のパソコンにソフトをインストールして入力作業をしており、治験の関係者間で情報共有がしづらく、作成した書式の管理にも課題があったという。

 今回の「カット・ドゥ・スクエア」は、ウェブ型システムであるため、インストールの手間がなく、利用開始時の負担が軽減される。登録した組織の利用者が、権限を与えられた治験に対し、書式データの参照や入力ができるしくみで、この書式データは、該当する治験にかかわるすべての利用者がネットワークを介して利用できる。登録されたすべてのデータは、強固なセキュリティのもとで蓄積され、該当する治験の関係者だけで共有できるという。

 このシステムは情報共有や入力をしやすくするためのさまざまな機能を備える。「データ共有機能」は、一度入力された情報を関係者が共有して利用することで、重複入力を削減する。「データ連携機能」は、連続して作成される文書間での自動情報連携ができる。「マスタ登録機能」は、再利用が想定される情報をマスタ化し、必要に応じて再利用することが可能だ。入力支援機能は、柔軟な行挿入、入力枠拡張と印刷時の別紙自動作成などが可能で、ユーザーの負担を軽減すると同時に統一書式のフォーマット遵守を実現するとしている。

 システムの情報共有基盤は、NECのデータセンター環境で提供されている。同社では「異なる機関が共有するウェブサービスに対する、コンピュータウィルス、ネットワーク侵入、脆弱性攻撃、他者の盗聴や不正な参照といったさまざまな攻撃から守るため、ファイアウォール、ウィルス対策ソフト、ウェブアプリケーションファイアウォール、通信時の盗聴を防ぐ暗号化などにより、強固なセキュリティ基盤を構築した」としている。

 今回のシステムは、治験事務の効率化や医療機関のネットワークの活用方策の検討など、治験を効率的、迅速に実施する環境を整えるため、厚生労働省の「新たな治験活性化5カ年計画」に基づき実現された。治験促進センターは、今後、治験の関係者へのシステム利用を促進し、国内治験の普及を見込んでいるという。

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