NTTコムウェアは、2007年4月からクライアントPCの仮想化に踏み切った。いわゆるシンクライアントの導入だ。そして、この3月末には全社員への導入をほぼ完了。引き続き協力会社への展開や仮想化による運用の効率化、事業継続性の確保などを図る計画だ。
5000アカウントを発行へ
NTTコムウェアがデスクトップ環境を仮想化することにした背景には、いくつかの理由と目的があった。まず、セキュリティリスクへの対策と社員のガバナンスの強化。そして、ITコストの削減と労務費の削減。いずれもITシステムに課せられた大きなテーマである。
NTTコムウェアの社員は約5100人。そこにグループ会社の社員を含めると約8100人、さらに協力会社を含むと約1万3000人へと膨れ上がる。もちろん、その業務内容は多岐にわたる。シンクライアント化のターゲットは、通常のオフィス業務の従事者だけに限らない。
シンクライアント導入を立案したのは社内の経営企画部だ。しかし実際に導入を主管し、これらのテーマを解決する任務を与えられたのはサービス事業本部のサービスプロバイダ部だった。導入を主管したNTTコムウェア サービス事業本部 サービスプロバイダ部 担当課長の太田竜児氏は、この複雑なシンクライアント化の要件について次のように説明してくれた。
「シンクライアントの導入に当たっては、文書管理機能を備えた全社ファイルサーバの設置とともに、導入後の運用を考えました。そこで、システム管理者による一元的な運用や24時間365日利用できサポートも受けられること、そして利用者にシンクライアントを意識させない、手間をかけない、不安を与えないことなどを考慮しました。そのためには、セキュリティを確保しながらも、データのスムーズな移行や従来のPCと同等のレスポンスを実現することが不可欠となったのです」(太田氏)
全社への導入が目標となったが、もちろん一挙にというわけにもいかない。そこでサービスプロバイダ部は、シンクライアントの導入をスタートした2007年4月に、まずは250人規模でトライアルを開始する。
「このトライアルで、さまざまな問題点の洗い出しや、社内にどのように展開していけばよいかを検討しました。その後間接部門から導入を進め、シンクライアントで業務がどこまでカバーできるのかを見極めることにしました。そして、2008年以降は全社展開を進め、すべての事業本部へ導入を働きかけたのです」
各事業本部への導入時期については、事業本部ごとに独自に判断するという形だ。それぞれの事情を考慮してのことだが、すでに2010年3月末までにはトータルで5000近い数のシンクライアントのアカウントを発行し、全社でシンクライアントが使える環境を構築した。現在、NTTコムウェア東京データセンターに設置されたシンクライアント用サーバは約100台に上っている。
サーバベースドコンピューティングと仮想PCを使い分け
現在はまだNTTコムウェア本社での展開に留まっているが、最終的にはグループ企業と協力会社も含め、最大1万3000人を対象にしたシステム構築を目指している。