マイクロソフトは3月30日、学生IT技術コンテスト「Imagine Cup 2010」組み込み開発部門の日本大会を開催した。これまで組み込み開発部門には日本大会がなく、全世界の参加者の中から選ばれたチームのみが世界大会への切符を手にしていた。つまり、日本のチームが必ずしも世界大会に進めるわけではなかったが、今回は日本チームの出場枠が世界大会で確保されており、初めて国内で代表選考会が開催された。ここで選ばれたチームが、7月にポーランドにて開催される世界大会に挑むこととなる。
今回の日本大会に出場したチームは、プレゼンテーションを披露した順に、サレジオ工業高等専門学校の「SP2LC」、専修大学の「Green Island」、大阪電気通信大学の「KON!!」、東京工業高等専門学校の「CLFS」の4チーム。この中から、2009年の世界大会を体験した有賀雄基氏をリーダーとした東京工業高等専門学校のチームCLFSが日本代表に選ばれた。
Imagine Cupソフトウェア開発部門同様、組み込み開発部門に与えられたテーマも国連ミレニアムの8つの開発目標に対応し、テクノロジで世界の社会問題を解決するというものだ。CLFSは2009年に引き続き、幼児死亡率の引き下げと妊産婦の健康状態の改善をテーマとして選択し、昨年の世界大会でも発表した電子母子健康手帳「Electronic Maternal and Child Health Handbook」に磨きをかけた作品を発表した。
Electronic Maternal and Child Health Handbookは、体温計などさまざまなセンサーを搭載し電子化した母子健康手帳。体温や血圧、体重などを測定して記録するだけでなく、妊婦や育児に関する知識も提供する。また、カメラを活用して遠隔での健康診断やアドバイスも受けることが可能になるというシステムだ。
前回の世界大会では、有賀氏がチーム最年少で「ほかのメンバーについていくだけだった」というが、今回は昨年世界大会で戦ったほかのメンバーが全員卒業したため、新チームを結成するところから有賀氏が中心となって働きかけた。今回の日本大会は、有賀氏以外に久野翔平氏と松本士朗氏が壇上に上がったが、世界大会参加時には松本氏のかわりにマレーシアからの留学生、Lydia Ling Yieng Chen氏がチームに加わる。
審査員を務めた神奈川工科大学教授の木村誠聡氏は、日本代表となったCLFSに対し「非常にいいアイデアで、システムやプレゼンテーションも良かった。ただし、なぜWindows Embeddedである必要があるのか、スマートフォンでも実現できるのではないかといった質問が世界大会で出てくるかもしれない。そのような質問にも対応できるよう準備を進めてほしい」と述べた。
CLFS以外のチームは、2位に専修大学のGreen Island、3位にサレジオ工業高等専門学校のSP2LC、4位に大阪電気通信大学のKON!!が選ばれた。Green Islandは、マングローブを乗せて海に放流し、二酸化炭素を回収するという人口浮島「Green Island」を発表し、SP2LCはRFIDと組み込みデバイスを組み合わせた選挙管理システム「DeSK」を、KON!!は遊び感覚でインターネットが楽しめるアプリケーション「Visual expression of the structure of the homepage using Virtual Reality」を発表した。
日本代表となったCLFSの有賀氏は、「前回の世界大会では思うようなプレゼンテーションができず、足を引っ張ってしまった。今回リーダーになったのもその悔しさが引き金になっている。これから世界大会に向けて、ネットワーク機能の実装やインターフェースの充実などを図り、去年の経験を生かしてがんばりたい」と述べた。