NECは4月15日、冷媒が液体から気体に変化する際の熱の移動を利用する「相変化冷却」と、液体と気体が混在した「気液二相流」で熱輸送を行う技術を利用して、省電力でIT機器を冷却するモジュールを開発したことを発表した。
相変化冷却は、冷媒が液体から気体、反対に気体から液体に変化する際に熱が移動する現象。たとえば打ち水をすると涼しくなる。気液二相流は、冷媒が蒸気と液体の二相で混在した状態で流れることを指す。蒸気だけで熱輸送するヒートパイプに比べて、熱輸送量を上げられるという。気液二相流はボイラーや原子炉で利用されているとしている。
NECが開発した冷却モジュールは、CPUなどで局所的に発生する熱を、モジュール内の冷媒の気液二相流で効率よく放熱器まで輸送する。輸送した熱は、冷媒の温度上昇を伴わない相変化を利用して放熱する。
ポンプが不要となりファンの送風量も削減できることから、消費電力を大幅に削減できるという。発熱体に設置した放熱器に大量に送風する空冷式と比べて約80%、冷媒の温度上昇が大きくなる水冷式と比べて約60%の消費電力を削減できるとしている。
モジュールは、受熱部分と放熱器をチューブで接続することで、さまざまなIT機器の仕様やレイアウトにも柔軟に設置でき、機器開発のコスト削減にもつながるとしている。従来の空冷式などは、CPUなどの発熱体に放熱器を直接付けていた。
高密度のサーバが大量に稼働するデータセンターは、冷却するための消費電力が課題になっている。その解決策としては、空気の流れが複雑で制御が難しいことから、送風を多めに行うことで冷却するというのが一般的だ。また、設備での対策として、床下に水冷配管を敷設した水冷ラックを使用したり、機器と空調機をまとめて小部屋に入れたりなどが展開されている。
NECは、今回の相変化冷却モジュールを活用して、設備への対策と組み合わせる考えだ。相変化冷却モジュールの信頼性や製造性を高めるなど、汎用的なIT機器に組み込めるよう研究を進め、データセンターの現在の主流である空冷式冷却と比べて40%以上の冷却電力削減を目指すとしている。