IDC Japanは6月14日、国内産業分野別IT市場における2009年下半期の実績の分析と2010年から2014年の市場規模予測について発表した。IDCでは、日本経済は徐々に明るい兆しが見えているが、先行き不透明なことから多くの企業でIT投資を抑制するとみており、2010年の国内IT市場規模は11兆2168億円、前年比成長率マイナス2.4%に減少すると予測。また2009年から2014年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)はマイナス0.1%、2014年のIT市場規模を11兆4256億円と予測している。
同調査によれば、2010年の各産業分野ではIT投資の抑制傾向が継続するためほぼすべての産業でマイナス成長になるとのことだ。特に、証券およびその他金融では、2010年の前年比成長率はマイナス6.0%で市場規模は2516億円、組立製造では同マイナス4.6%で市場規模は1兆2627億円と、マイナス幅が大きくなるとみている。また、官公庁は政府による事業仕分けや公共事業の見直しが継続中のためIT予算は抑制され、2010年の前年比成長率はマイナス5.8%、市場規模は6780億円。ただし、医療分野は同プラス0.5%、市場規模4488億円とプラス成長を維持し、保険、教育では比較的マイナス幅が小さくなるとIDCは予測している。
一方、2011年の国内IT市場については、前年比成長率プラス0.8%、市場規模11兆3111億円とIDCは予測している。2011年は、経済環境の改善に伴って多くの産業分野でプラス成長に回復し、特にこれまで凍結されていたシステム刷新案件が再開されることから、銀行、組立製造、公共および公益で比較的高い成長率となると同社はみている。また通信およびメディアでは、次世代携帯電話の規格であるLTEなどの導入に伴うIT投資が加速するとIDCは予測している。
また、2011年以降の国内IT市場については、プラス成長に回復するものの、クラウドコンピューティングの利用拡大や海外でのIT投資拡大などにより、当面低い成長率にとどまるとIDCではみている。しかし、クラウドコンピューティングの利用拡大は、自社所有の既存システムとの環境を混在させるため、障害対策などの策定が複雑化する。また海外IT投資の拡大は、国内本社と海外拠点間でのIT戦略上の役割分担などの複雑化につながる。したがって、混在環境下での効率的な運用や海外拠点とのシステム連携および統制強化の重要性が増していくとIDCはみている。
IDC Japan ユーザー調査 リサーチマネージャーの福田馨氏は「ITベンダーは、ユーザー企業のニーズに合わせてクラウドコンピューティングに関連するソリューション、またはユーザー企業の海外進出を支援する体制の強化を行うだけではなく、クラウド環境下およびグローバルでのIT統制を支援することが重要だ」と分析している。