およそ10年間“守りの改革”といえる構造改革を進めてきた富士通は、2010年度から“攻めの改革”に転じる。全社の軸をサービスに置くとともに、特にクラウド関連事業の立ち上げを加速させたい考えだ。
同社代表取締役社長の山本正已氏は、市況の回復が見込まれる下期が「守りから攻めに転換できる絶好の機会」との認識。中国地方政府と合弁でデータセンターを設置するなど、2010年度にクラウド関連で1000億円を投資する。
本業強化で増収増益の流れ確立へ
富士通は2010年度に連結売上目標を4兆8000億円と定めた。2009年度の実績は4兆6795億円で、前年比で1204億円増加させる。営業利益は前年比906億円増の1850億円、経常利益は同988億円の1700億円、当期純利益は同19億円増の950億円を目指す。
攻めの経営に転じる2010年度は、本業の収益力を強化し、増収増益基調を確立したい考えだ。山本氏は目標とする数字について「あえて慎重に判断した」と述べつつ、「社内的にはさらなる上積みを目指す」としている。
総投資の1/4がクラウド関連
2010年度に特に力を入れるサービス事業では、クラウド関連事業の立ち上げを加速させるなど、クラウドサービスを中心に強化する。
「従来はサービスとプロダクトの両輪で、両者をグローバルに拡大することを目的としていた。しかし、今後はサービスセグメントを牽引役とすることで、ビジネスと収益の拡大を目指す」と山本氏。グローバルに展開しているプロダクトとテクノロジーが、クラウドサービスを支えるという垂直統合モデルを構想している。
そのサービス事業では、2010年度に1700億円の営業利益を目指す。「牽引役として確実な達成を目指す」という山本氏の強い意志のもと、関連商談の展開を本格化させる。特に、エネルギー、交通、農業、医療、環境、住民サービスといった社会インフラ向けに商談を展開したい考えだ。目標達成のために、2010年度にクラウドスペシャリストを1000人、2011年度末までに5000人の育成を目指す。
「富士通の強みは垂直統合モデルが築いた高い信頼性にある。安全安心で環境に配慮したミッションクリティカルレベルのトラステッドなクラウドを提供できる。それを国内だけでなく、グローバルに展開する」と山本氏。2010年度中に日本と同じ高い信頼性を持ったクラウド基盤を、米国、英国、ドイツ、シンガポール、オーストラリアの海外5拠点へ展開する。また、2011年度中に中国南部にデータセンターを開設する。このデータセンターは「すでに鍬入れも終わり、建設に入っている」段階で、「投資額は数十億円」(同)規模だという。