筆者は1年ほど前から、AmazonのAPIは「デファクトスタンダード」であるという宣言を耳にしてきた。最初にそう聞いたのはSimon Wardley氏(当時はLinuxベンダーのCanonicalに在籍)からで、その後はEnomalyの最高技術責任者(CTO)でクラウドブロガーのReuven Cohen氏などからも耳にした。
ユーザー数で測るならAWSの「Elastic Compute Cloud(EC2)」と「Simple Storage Service(S3)」のAPIが今日の市場を牽引するIaaSだという意見には賛成だ。だが、そのような地位にあることと長期的な標準になることは必ずしも同じではないという点については、Ruben氏に同意する。それには以下の3つの理由がある。
AmazonのAPIが定義するクラウド機能セットは1つしかない。Amazonのものだけだ。確かにAmazonはクラウドサーバとストレージサービスの分野で大きくリードしている。また、その機能をサポートする極めて強力なエコシステムを有しているのも事実だ。しかし、EC2は実際には厳格に定義されたサーバおよびネットワークアーキテクチャで、分散型アプリケーションアーキテクチャとインフラストラクチャ構成における革新の余地はほとんどない。
もし開発者コミュニティーがこのアーキテクチャの使用に伴うパフォーマンス、可用性、セキュリティの問題をすべて克服する方法を見つけられるのなら、それは大した問題ではない。しかし、エンタープライズインフラストラクチャアーキテクチャが現在の状態に進化してきた過程には、それなりの理由がある。そして多くの人々が、Amazonのアーキテクチャの欠点によってさまざまなアプリケーションの有効性が制限されてしまうと考えている。
実際のところ、Amazon EC2が一部のユーザーを悩ませている1つの分野は、I/Oパフォーマンスに関するものだ。ネットワークアクセスとストレージアクセスの両方に予期せぬ遅延が発生することが分かっている。ある有名なオープンソースデータベースの主要開発者の1人は、筆者に対し、この問題のために一部のクライアントをほかのクラウド環境へ移行させることを検討したと話してくれた。
ストレージの場合も同様で、ユーザーに提供されるのは、Amazonがそのユーザー向けに有効化した基本的な機能セットだ。もちろん、ユーザーはどんなデータベースでもEC2に追加できるが、その場合は「標準」のAmazon APIを使用しないということになる。それが狙いなのかどうかはよく分からない。
CNET Japan 特別企画 -PR-
ITジャーナリスト佐々木俊尚氏と日立のキーパーソンが語る!
2010年企業クラウド元年 ビジネスニーズが企業のクラウド化を加速する