「ITコンシューマライゼーション」という言葉が頻繁に聞かれるようになった。ITの進化はコンシューマー市場から始まり、その流れがのちに企業向けITにも浸透していくというトレンドだ。
米Salesforce.comは、この動きをいち早くとらえ、さまざまなエンタープライズITをネット上でサービス化してきている。同社CEOのMarc Benioff氏が「なぜエンタープライズ向けのAmazon.comがないのだろう」と考えてSalesforce.comを創業したのと同様に、同氏は「なぜエンタープライズ向けのFacebookがないのだろう」と考え「Salesforce Chatter」をリリースした。
6月22日に正式リリースとなったSalesforce Chatterのユーザー企業は、10月にはすでに2万社を超えたという。米Salesforce.comで最高マーケティング責任者(CMO)を務めるKendall Collins氏に、Chatterが企業に与える影響や今後の展開について聞いた。
--Salesforce.comはITコンシューマライゼーションを他社よりも早く進めている企業だと思う。このITコンシューマライゼーションへの流れをSalesforce.comではどうとらえているのか。
ここ10年ほどでITコンシューマライゼーションは活発になっており、今後もこのトレンドは続くだろう。コンシューマーは、新しくて使いやすそうであればすぐに試そうとするため、企業よりも常に一歩先に新技術を取り入れる。逆に企業は、インフラやハード、ソフトウェア、これまでの風習など、さまざまなレガシーを抱えているため、どうしてもコンシューマーより動きが遅くなっているのだ。
しかし考えてみてほしい。現在米国企業の多くは、従業員が就業時間中にiPhoneを利用したり、FacebookやYouTubeにアクセスすることが時間の無駄だとして懸念を示しているが、こうした懸念は取り除くべきだろう。でなければ、企業は多くのナレッジワーカー世代を失うことになる。ナレッジワーカー世代にとってこのような技術は当たり前のことであって、コンシューマーの選択を企業が阻止することはできないのだ。
--ITコンシューマライゼーションは、企業のあり方を変えていくことになるのか。
そうなるだろう。保守的な業界と言われる金融機関のJ. P. Morganでさえ、ビジネス用スマートフォンをBlackBerryからiPhoneへと移行しようとしているのだ。これは、企業がコンシューマーテクノロジを採用することに対して世界がいかに早く変化しているかを示す良い例だ。この動きはさらに加速する。
また、ビジネスアプリケーションはコンシューマーサービスにより近いものになっていくだろう。中でも、Facebookで使われているフィードやフィルタ、プロフィールは非常に重要な要素で、これらの機能は今後5年から10年の間にビジネスソフトでも必須の機能となる。Microsoftはこうした技術に追いつくのに20年かかるかもしれないが、それでも必ず必要となってくるのだ。なぜならこれはコンシューマーが望んでいることで、われわれが情報を入手するために必要な機能だからだ。
これらの機能は、新しいデスクトップのあり方だと言える。フィードがあるからこそ、ナレッジワーカーは自分に関連のある情報が何なのかをすぐにつかめるのだ。フィルタ技術を使いこなしたり、フィードの関連性に知性を持たせることができれば、企業の価値はより高まることになる。