NECとアビームコンサルティングは12月8日、鉄道事業者向け経理システムをネットワーク経由でサービス提供する「鉄道業向け経理クラウドサービス」を開発し、12月から販売およびサービス提供を開始すると発表した。
鉄道業向け経理クラウドサービスは、SAPの基幹業務ソフトウェア「SAP ERP」をベースに、鉄道会計規則に準拠した決算整理機能や鉄道業固有の固定資産管理など、鉄道業特有のシステム機能を加えてサービス提供するもの。この追加機能には、アビームコンサルティングの交通運輸業向けテンプレート「ABeam Transportation Solution for SAP ERP」を利用しているという。NECは、「クラウド指向サービスプラットフォームソリューション」として企業等に幅広いクラウドサービスを提供しており、同サービスもこのソリューションの一部として提供していく。
鉄道業界では、旅客・輸送事業に加え、不動産事業、流通事業、ホテル事業、旅行事業など多岐にわたる事業を運営する企業も多い。そのため、グループ全体視点での経営情報の見える化や、IFRS(国際会計基準)への対応を視野に入れた会計方針、業務・システムのグループ標準化および統一化への取り組みが求められているという。また、事業毎に構築、運用しているシステムにかかるコストの増加や、ICカードなど新規分野におけるIT投資ニーズの高まりなどを背景に、投資の適正化も課題となっている。NECでは、こうした課題の解決を支援し、将来の成長にも寄与できる先進的な経理システムを短期間かつ低コストで利用可能とするため、同サービスの開発に至ったと説明している。
鉄道業向け経理クラウドサービスは、鉄道業界特有の経理システム機能を、企業規模や利用範囲に応じて提供するため、「基本機能」と「オプション機能」のメニューをそろえることで、様々なニーズに対応するという。基本機能は、「伝票入力/電子承認」「債権管理/債務管理(出納管理)」「一般会計(元帳管理)/決算」「資金繰/資金実績管理」「予算編成管理」「管理会計」の6機能。これにオプション機能である「購買/在庫管理」「固定資産管理/償却資産税申告」「工事契約管理」「リース資産管理」「不動産管理」「金融商品管理(借入金/社債/有価証券)」「管理連結/グループ経営管理」7機能のうち、必要とする機能を加えることができる。
また、鉄道事業者向け経理システムの構築・運用支援および業務改善等のコンサルティング実績を持つアビームコンサルティングのテンプレートを基に、短期間で高品質な経理基幹システムを提供するという。
NECでは、同サービスにより、同等のシステムを従来のように自社で構築、運用する場合に比べ、システムにかかるコスト(TCO)を5年間で最大30%低減できると試算している。NECとアビームコンサルティングでは今後、経理システム以外の鉄道業向けソリューションについてもクラウドサービスとしての提供を計画しており、鉄道事業者の経営、業務革新に貢献するソリューションを一層強化していく考えだ。両社は、大手民間鉄道事業者を中心に、今後3年間で15社への導入を目指す。