熊本県益城(ましき)町教育委員会は、日本IBMの協力のもと、クラウドコンピューティング環境を活用した「校務支援システム」を構築した。2011年度より、益城町内の小中学校7校で、児童生徒約2860名、教員約200名が利用する予定だ。
同システムは、校務の効率化や児童生徒と教員のコミュニケーション支援といった、教育現場の活性化に貢献するという。また、校務の標準化や効率化を実現することにより、教員の本来の業務である「児童生徒と向き合う時間」の増加を目指している。教員間の情報共有がスムーズになるため児童生徒の日々の活動や成果を各教員が簡単に知ることができ、声かけや支援をきめ細かく行うことにより、児童生徒と向き合う時間の増加と教育の質の向上にも役立てることができるとしている。
同システムは、電子指導要録の作成、出欠入力、成績入力、通知表作成を行う「教務支援システム」と、教員間の情報共有を支援し、休暇や出張の電子申請、決裁を行うグループウェア「ゆうnet」から構成されている。なお、システムによる電子指導要録の作成は、小中学校では国内初になるとしている。
システムの運用開始にあたっては、2010年11月から小中学校各1校にて実証事業を実施。校務支援システム、セキュリティツール活用のための職員研修の実施、勤務時間内に児童生徒と接する時間が向上するか、教員の校務効率化に役立つかといった利用可能性や、セキュリティ確保の検証などを行ったという。
また、同システムは、「教育クラウド」のひとつと位置づけられている。教育クラウドとは、学校教育の情報化推進のためにクラウドコンピューティングを活用するもので、各校教員の負担を増加させずに運用を開始できるため、校務支援だけでなく、Eラーニング、学校経営支援と、さまざまな業務に展開されていくと考えられている。一方で、児童生徒や教員の個人情報を取り扱うため、教育クラウドには、強固なセキュリティの確保、ID、パスワード管理の徹底、セキュリティツールの活用など、現場における情報セキュリティ教育の推進も重要な課題だとされている。
日本IBMでは、教育クラウドに必要なセキュリティ要件を満たし、情報漏えいの防止やデータの保護を実現するため、今回、教務支援システムに対して、同社の大和ソフトウェア開発研究所による先進的な技術を実装したという。これにより、教務支援システムと接続している際には、自動的に厳しいセキュリティポリシーを適用する「保護モード」、それ以外では「通常モード」と、PC上で切り替えながら利用できるという。保護モードでは、ポリシーで制限した特定の領域にしか教務支援システムからのファイルのダウンロードができないほか、画面コピーやデータをポリシーで制限した以外のソフトウェアや領域にコピーすることができなくなる。これにより、業務の効率や利便性を損なうことなく教務支援システムで得られるデータに対するセキュリティを確保するとしている。