Service化が求めるIT部門の存在の大きな転換(転の部)
(編集部より:ITコンサルタントである筆者の宮本認さんと情報システム部長との会話です。これまではSOAの“Service化”によってIT部門が提供するものが変わり、それによってIT部門そのものも変わらざるを得ないことを話してきました。Service化の影響はさらに広がっていきます。あわせて起と承もどうぞ)
投資の波を作らないIT投資
「ここまでは、IT部門がServiceを提供するために、開発したServiceを営業する部門に転換し、そのために統合化と細分化を両立させた組織に変わり、その運営管理も、マーケティングから原価計算を含め、現代的な経営管理を行う部門になるべきと、申し上げてきました」
「うん、そうね。とても重たい話だけどねぇ」
「まぁまぁ。そうしたITと組織がモダンになった結果、一つ一つの開発や運用などの“案件”は、どうなっていると思いますか?」
「それは、全体としては統合化されている中の小さなパーツを作るようなものだろうから、細分化が進んでいることになるんだろうねぇ」
「そうです」
「そうなると、大規模にいろいろと作っていくことがなくなるねぇ。ま、当初の転換期はいろいろと大きい転換が必要なのかもしれないんだけど…」
「もう部長、本当に素晴らしい。そうなんです、この状態。経営から見るとものすごくいいことがあります」
「キャッシュと費用の平準化でしょ?」
「あぁ~もぅ部長! なんで部長は、こんなところで部長なんてやって、僕なんかとダベッてるんですか。本当に素晴らしい! そうなんです。ITって最近大規模な見直しをすると数十億円、数百億円かかることなんてザラで、大規模銀行の場合なんて数千億円かかりますよね」
「確かに」
日本に残る巨大戦艦志向
「そういうのを一気にやろうとすると、経営には、大規模なキャッシュ負担と費用負担がかかってしまう。実際にある例ですけど、IT投資を巨大に行ってしまったがために、赤字経営に陥ってしまったという企業もあるくらいです。Service化というのは、このIT投資負担を平準化させる効果があるんです」
「そうだね…」
「部長、元気出しましょうよ~」
「そりゃ、ね…。1人が10人分の仕事をやっているって聞くと。部下が可哀想でね…」
「それをなんとかするのが、部長の仕事です。次の部長に、この重荷を押し付けるんですか?」
「痛いこと言うなぁ…。わかった。よし、続けよう」
「何でしたっけ……そう。案件の大きさの話ですね。実は、日本ってそういう意味で、少し“巨大戦艦”志向が未だに残っているところがあるんです」
「どういうこと?」
「僕が最近聞くのは、当然このご時勢ですから、ある程度余裕のある企業の話なんですけど、IT投資の波というのを未だに考えている人たちがいる。大規模投資をして、その償却のサイクルって奴を考えている。今作ったシステムを10年後にもう1回作り直すことをどうするかってことを考えている。経営を説得できる理由がないって悩んでいるんです。僕の考えでは、それは前時代的だわ…って感じです」
「いいなぁ。ウチもそういうことを悩みたい」