しかし、企業はSaaSにあまり期待していない面があります。コミュニケーションやグループウェアならいいのですが、基幹系や保守の業務は、SaaSでは荷が重いと感じている企業が多いようです。一方で、PaaSの利点はまだあまり認識されていません。残念なことに、Saleseforce.comのForce.comは無料で試せるのに、まったく触れたことがないIT部員も少なくありません。
--「運用面で期待したが効果が得られなかった」ものとしては、「運用コストの削減」が15.88%で最多でした
過剰な期待もあるのでしょう。クラウド導入はトップダウンで、コストを下げろの一点張りで号令をかけられることがよくありますが、結局それほどコストが下がらないことも少なくありません。
私はユーザー企業に対して「単にクラウドを導入するだけでは、それほどコスト抑制効果を期待できませんよ」と説明しています。クラウドをアウトソーシングの感覚で使用しても、コストはそれほど削減できません。プライベートクラウドは特にそうです。すべてを移行させれば話は別ですが。レンタカーを毎日借りていたら、実際に車を買うよりも高くなるのと同じです。
実際試算してみると、コストが下がらない企業がほとんどです。その理由を説明すれば、理解してもらえます。そこで、コストではないほかの要素にクラウドを適用して、効果を上げようという話になります。
--プライベートもパブリックも、すべてまとめて面倒を見られるような管理ツールがあると、状況は変わりますか
プライベートクラウドもパブリッククラウドも、現実の運用は結構手間がかかっています。既存のオンプレミスの運用もあわせて、クラウド活用で運用が余計に大変になっている企業が多いのではないでしょうか?本来は、オンプレミス、パブリックおよびプライベートクラウドの3つの環境をシームレスに運用できるツールがあればよいと思うのです。
そのような機能を持つ製品やオープンソースツールも登場していますが、まだまだ認知度も低く、実績も少い。現時点では、企業はこの種のツールに対して、あまり関心がなかったり、様子を見ているといった段階です。
--クラウドの運用管理ツールの認知度はそれほど低いのでしょうか
実際には、認知するしない以前の状態ではないかと思います。
いまのクラウドは、かつてメインフレームからUNIXへの移行が始まった頃に似ています。クラウドそのものをまだよく理解できていない企業が大半であり、周辺ツールをどうしようかなどということまでは、とても手がまわらないでしょう。しかし、さまざまなクラウドを複数使うようになれば、確実に管理ツールが必要になります。
--「人員の削減」も効果が上がらなかったとする回答が13.53%です