企業がクラウドを導入する際の最大の障壁はインフラとデータのセキュリティ――。トレンドマイクロは7月29日、クラウドセキュリティに関連するグローバル調査の結果を発表した。企業や団体に勤めるシステム導入の意思決定権限を持つ従業員、日米英独印など6カ国各200人、計1200人を対象にした。(1)クラウドの導入状況、(2)クラウドの課題、(3)仮想化デスクトップ基盤(VDI)の導入状況と目的、(4)サーバ仮想化の導入状況と目的――という4つのテーマで調査されている。
パブリッククラウドの導入率は海外が37.3%、国内21%と差が見えているが、国内でも50%以上が試験や検討の段階にあり、今後の浸透が予測できるという。サーバ仮想化を利用中のユーザーと未導入のユーザーでクラウドの導入率に顕著な差がみられ、サーバ仮想化を運用しているユーザーではクラウドの導入率が約50%、未導入が10%強となっている。サーバ仮想化を運用中のユーザーはクラウドの導入率も高く、物理から仮想化、仮想化からクラウドというIT環境の移行が実際の傾向として国内でも認められるとしている。
クラウドの課題として、国内では「データとインフラのセキュリティ」が60%(図1)と最も高い、(海外48.5%、図2)。セキュリティ以外では「費用対効果または投資収益率が不明確」は海外に比べ国内でクラウドの採用をとどまらせる要因と認識しているユーザーが多いことも明らかになっている。過去12カ月以内でクラウド利用中にセキュリティ上の問題を国内で44%、海外で42.7%と4割以上が経験しており、漠然とした懸念や不安だけでなく、セキュリティ上の不備や問題が実際の運用での課題となっていることも判明している。
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VDIの導入率では国内28.5%、海外34.4%となっており、試験運用中や導入時期を具体的に計画しているユーザーは海外で48.8%であるのに対し、国内は23.5%にとどまっているという。国内ではすでに利用しているユーザーと検討が具体化していないユーザーで二極化の傾向がみられるとしている。
VDIの導入目的は「セキュリティの改善」が国内で61%と最も高い。国内で計画段階にあるユーザーは「セキュリティの改善」に加えて、「運用コストの低減」(52.5%)、「管理の容易さや標準化」(49.2%)の上位3項目が突出して高く、クライアントマシン環境に対して、安全性と運用管理の手間やコストの課題の解決が期待されていることが分かったとしている。「VDIにはより厳しいセキュリティ手段が必要」という意見に同意したユーザーが国内で57.6%、海外で65.2%と半数以上となっており、「セキュリティの改善」を目的にVDIを導入、検討するユーザーが多い半面、移行するだけでなくさらにセキュリティを強化する必要性を感じていることもうかがえるとしている。
サーバ仮想化の導入率は国内41.5%、海外39.8%と同水準だが、具体的な計画がないユーザーは国内がやや多い結果になっている。利用中のユーザーの導入目的として、国内は「運用コストの低減」が60%、「セキュリティの改善」が59.1%と高く、国内外を問わずセキュリティが重要な目的の一つとみなされているという。
計画中の国内ユーザーでは「クラウドを展開する戦略」が55.8%、「セキュリティの改善」が53.8%、「管理の容易さや標準化」が50%で上位3項目を占めており、特に「クラウドを展開する戦略」は、利用中の企業に比べて15.8%も高く、今後のクラウドへの移行を見据えて仮想化の導入を検討しているユーザーが多いと説明している。