クラウドコンピューティングの都市伝説のベールを剥ぐ

Werner Vogels (Amazon社 CTO)

2011-08-22 07:00

 Amazon.comで最高技術責任者(CTO)を務めるWerner Vogels氏が、ZDNet Japanに論考を寄せてくれた。本特集「クラウドコンピューティングの真の価値」では、Vogels氏の寄稿を連続して紹介していく(ZDNet Japan編集部)

 クラウドコンピューティングについては、多くのうわさが飛び交ってきました。ほとんどすべてのITベンダーが、クラウド用のある種の製品またはサービスを提供していると主張しています。一部のITベンダーは、「プライベートクラウド」や「ハイブリッドクラウド」という用語を作り出して、複雑さに拍車をかけています。では、クラウドコンピューティングとは何でしょうか。そして、あらゆる規模の企業、政府、および組織にとってどのような意味を持つのでしょうか。

Amazon.comのCTO、Werner Vogels氏 Amazon.comのCTO、Werner Vogels氏

 ごく簡単に説明すると、クラウドコンピューティングとは、自身のデータセンターまたはサーバを購入、所有、および維持管理する代わりに、サードパーティーのインフラストラクチャプロバイダーから必要に応じて処理能力およびストレージサービスを購入し、そのインフラストラクチャの管理と保守はインフラストラクチャプロバイダーに任せることです。これらのリソースとはインターネットを介してやり取りし、何の投資もせずにキャパシティを即座に拡大/縮小することができるため、すべてのコンピューティングリソースがクラウド内にあるように感じられます。

 このようなサービスが本当の「クラウドコンピューティング」となるためには、次の5つの特性を備えている必要があります。

1. 設備投資が不要

 サーバやデータセンターに設備投資をする必要はありません。設備投資支出を、変動費用に振り向けることができます。これは、多額の資本を持たない会社や、資本を単なるインフラストラクチャに費やしたくない会社にとって、非常に大きな利点です。

2. 使用した分だけ支払う

 前払い金も、書面での契約も、長期契約も必要ありません。実際に消費した分に対してのみ支払えばよく、ビジネスニーズに最も合った価格モデルを柔軟に選択できます。

3. 真に融通性のあるキャパシティ

 拡大も縮小も自在にできるので、必要のない余分なキャパシティを使い続ける必要はありません。また、クラウドでは、アプリケーションもビジネスも必要なだけ迅速かつシームレスに成長できます。不要になったキャパシティは、即座に振り捨てることができます。

4. 市場投入までの時間が短い

 どのようなプロジェクトでも、はるかに迅速に進めることができます。サーバのキャパシティが割り当てられるのを何日も何週間も待たなくても、大量のサーバキャパシティを数分で使えるようになります。

5. 主要業務に集中する

 ほとんどの会社にとって差別化にならないインフラストラクチャの運用に、限られた技術リソースをつぎ込む代わりに、顧客へのサービスや自社のビジネスを差別化する分野に価値を付加するプロジェクトに時間をかけることができます。

 上記の利点のうち1つでも存在しない場合、それは本当のクラウドコンピューティングではありません。

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