インメモリアプライアンス「SAP High-Performance Analytic Appliance(HANA)」を世界で最初に導入したのは野村総合研究所だ。「グローバルのSAP HANA担当者が顧客に直接製品を紹介したところ、すぐに採用が決定した。これまで通り、SAPジャパンとその顧客がやり取りしていたら、資料や情報などをまず日本語化しようという話になり、これほど迅速な採用にはならなかっただろう。技術革新はますます加速している。TCOの低減化に有用であるとして、SAP HANAはその顧客に採用されたのだが、顧客には従来のように半年も待っていられる余裕はない。今回の日本市場向けグローバル施策は、SAPのDNAが変化したということになるだろう」
無論、SAPジャパンは情報の日本語化をやめてしまうわけではない。
「ほぼ日本国内だけの事業展開が中心で、半年程度の時間差があっても十分とみている企業を中心に継続していく。一方、スピード感をもって海外の競合と互角に戦っていこうという意思を持つ企業には、日本語化する以前に、ありのままの情報を直接伝える。情報についての顧客からの要望は、このように両者二極化していくのだろう」
新しいモバイル機器への積極対応を高成長につなげる
迅速化の施策はさらに広がってきている。Maier氏は「これからもソリューションを展開する上で、パートナー、顧客とも歩調を合わせ、ソフトとサービスをパッケージ化して、技術革新の速度を上げていきたい。パッケージ製品は18カ月ごとなどという長い周期ではなく、1四半期ごとに新しいものを携えて、顧客を訪問できるようになっている。また、SAP RDS(Rapid Deployment Solution)は、SAPにとって新たな試みであり、低価格で早期導入が可能なパッケージだ。ERPやビジネススイートを軸に、さまざまなローカライズが可能になることが利点だ」と語る。
もうひとつ、今後のSAPにとって重要な領域となるのはモビリティだ。これは単にモバイル向けのソリューションをそろえることを意味するだけではないという。SAPは「2015年には、各国の人口の半数が従来の一般的なパソコンとは異なるモバイルデバイスを使用することになるだろう」(同)と予測。Maier氏は「SAP製品のユーザーは現行で3000万人を超えているのだが、モバイルデバイスへの対応を強化し、その頃(2015年)にはユーザー数を10億人にまで伸ばしたい。SAPがSybaseを統合したのは、ビジネススイートとERPを小型端末にもより適用していきたいと考えたからだ。我々は、顧客とパートナー向けにSDKを提供し、SAPのプラットフォーム上で独自アプリケーションを開発できる環境を整えている」と述べ、モビリティを高成長への起爆剤とすることへの期待感を滲ませた。
SAPといえば、やはりERP製品が想起されるが、「国によってはERPがほぼ半分、あるいはERP以外のソリューションが過半というところもあるなど、製品領域の拡大が急速に進んでいる」(同)状況だ。Maier氏は「日本市場をみると、ERP以外のところは、カスタマーベースでは企業間の資材および部品調達、SCMなどは年率30%増の勢いで成長する可能性があるだろう。これまで日本市場では、ERPとSCMをはじめとするコンポーネント製品が中心だったが、今後は企業が抱える課題解決に向けたソリューションに力を注いでいきたい。さらに、コンポーネントとソリューションのそれぞれがもつ要素を組み合わせて、技術革新を続けていこうと考えている」としている。