4. メモリの監視と制御
メモリの監視と制御は、メモリオーバーヘッドメカニズムをシステム全体で統合的に実現する必要があり、この仕組みが適正なメモリ状態を管理できない場合、システム全体の性能に大きな影響を及ぼす結果となります。
例えば、無駄なページングやスワッピングが発生することは、メモリ以外のシステムリソース(特にディスク)に大きな負荷がかかるからです。
この課題に対応するために、MOM(Memory Overcommitment Manager)が開発されています。このソフトウェアは、「github」からダウンロード可能であり、現時点でのリリースバージョンはV0.2.1です(図1)。
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MOMは、ホストOSとゲストOSの情報を収集し、その状態に応じてメモリバルーニングやKSMをコントロールする役割を果たします。特徴的なのは、状態に応じた挙動を制御するために予め用意したポリシーを設定し、ポリシーエンジンがそのポリシーに応じたメモリバルーニングやKSMによるメモリサーチを実施させる機能を持つことです(図2参照)。
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MOMはリリースバージョンを見てもわかるとおり、まだ発展途上にあります。今後どのような発展を遂げるかは未定ですが、柔軟かつ最適なメモリリソース管理が実現できる方向に向かうと予想されます。
5. 安定稼働のために
KVMによる仮想化環境の実現によって得られる利便性については、本特集の中で紹介してきましたが、仮想化技術の中身に目を向けると、物理環境と比較して非常に複雑な仕組みとそれを制御する機能が必要になります。
今後クラウドコンピューティングの促進が加速していくなかで、仮想化技術としての複雑な仕組みを容易に監視、制御する機能増強が進んでいくことでしょう。クラウドコンピューティングでは、仮想化技術のKVMが備えるべき管理機能とクラウドOSが提供する管理機能が、円滑に相互連携することが重要であり、安定したシステム稼働と運用には必要不可欠なテーマといえます。
最後になりましたが、今後ますます発展していくクラウドコンピューティングの主役はKVMにシフトしていく可能性が高いとみています。理由はオープンソースであるLinuxカーネルにハイパーバイザ機能を組み込んだソフトウェアであり、今後の機能増強の迅速性に期待が高まるからです。国内のクラウドサービス事業者においても、既に多くの事業者がKVMをクラウド基盤に採用しています。現時点では管理系の機能増強の余地を残していますが、今後のKVMの発展には多いに期待しています。
山﨑靖之
サイオステクノロジー株式会社 執行役員 セールスコンサルティング担当
セールスコンサルティングを担当するかたわら、「The Open Group」の認定する「TOGAF8 Certified Individual」認証アーキテクトとしても活動している。
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