ストレージとデータベース、将来の手駒は揃った--EMCのビッグデータ戦略

栗原潔 (テックバイザージェイピー)

2011-10-27 08:00

 本特集「ビッグデータとは何か」の7回目となる今回は、EMCのビッグデータ戦略を分析する。

 改めて説明するまでもなく、EMCはストレージ市場のトップ企業のひとつだが、それに加えてセキュリティのRSA、エンタープライズコンテンツ管理のDocumentum、データベースのGreenplumなどの上位階層のソフトウェア企業を積極的に買収している。ゆえに、同社の「ビッグデータ」戦略もストレージ階層と上位階層の両輪型となるのは当然だ。

 本記事では、ストレージ製品のIsilon、そして大規模分析用の並列DBMSであるGreenplumについて分析しよう。

アイシロン:スケールアウトNASの差別化要素

 Isilonは2010年の11月にEMCが買収した「スケールアウトNAS」のベンダーだ。スケールアウトNASとは、ストレージ機器の台数増によって容量増加だけでなく性能強化を図るというアプローチであり、「ビッグデータ」を支えるストレージでは不可欠とも言える要素だ。

 Isilonのテクノロジで重要な差別化要素は、ボリュームという概念がないという点だ。「ビッグデータ」の世界では、従来型のファイルシステムでは十分であったと考えられていたボリュームサイズの上限(たとえば16テラバイト)が必ずしも十分でないケースもあり得る。もちろん、複数ボリュームを使えば問題はないのだが、管理面での負担が大きくなるという課題がある。このボリュームの容量制限がないという理由だけでIsilonが「指名買い」となる案件もあるようだ。

 また、ディスクとコントローラを一体化した構造(いわゆるマルチヘッド構成)を取ることで、容量の追加と同時にコントローラの処理能力が追加でき、コントローラのボトルネックを避けられる点もIsilonの価値提案のひとつだ。もちろん別途、コントローラを追加・強化すれば同様の目的は達成できるのだが、構成管理を簡略化できる点にマルチヘッド構成の意義がある。

 現時点でのIsilonの用途は、3DVFXなどの映像系、医療画像診断系、ゲノム解析、石油資源開発の地質調査などの分野だ。「ビッグデータ」の応用ABCの分類(本特集の第5回を参照)で言えば、B(Bandwidth)とC(Contents)の分野が中心ということだ。もちろん、A(Analytics)は今後の重点戦略分野である。

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