IDC Japanは11月9日、国内クラウドサービス市場予測を発表した。2011年の国内クラウドサービス市場は前年比45.9%増の662億円となる見込み。急速に拡大を続け、2015年の同市場規模は、2010年比の5.6倍となる2550億円になると予測している。
同社は国内クラウドサービス市場は本格的な成長期にあると指摘。クラウドプラットフォーム(PaaS)とクラウドインフラストラクチャ(IaaS)は、消費者向けネットサービスの基盤、特定アプリケーションのカスタマイズ開発/実行、新規ウェブアプリケーションの開発/実行環境として高い成長を遂げていると分析している。2011年以降は、これらの領域に加え、PaaS/IaaS上でバックアップシステムを構築したり、業務アプリケーションを稼働させたりするユーザー企業が増加するとみている。
今回の調査は9月末までの情報をもとに分析している。前回の調査と比較して、2012年以降の予測をわずかに下方修正している。セグメント別ではクラウドアプリケーション(Application as a Service:AaaS)は上方修正、PaaS/IaaSは下方修正している。AaaS市場は、コラボレーションアプリケーションの堅調な成長と、ベンダーによる産業特化型アプリケーションの順調な開発がみられるとしている。
一方、ホスティング型のプライベートクラウドサービスが発展していく中で、PaaS/IaaS市場に与える影響を考慮したという。プライベートクラウドサービスの発展は、ユーザー企業におけるパブリッククラウドサービスの理解を促し、互いに影響し合って、国内クラウド市場を拡大するようになるとしている。
同社は、クラウドサービスの普及に伴って、特定ベンダーのクラウドに依存する“ベンダーロックイン”が話題になる機会が増えてきたと指摘。ベンダーロックインは選択の自由を奪い、ユーザー企業にとって懸念すべき事項と説明する。
だが同社は、ユーザー企業はベンダーロックインに過剰反応する必要はないと提言。システムのライフサイクルを通して高い経済性を得られるのであれば、ベンダーロックインを許容することも考慮すべきとしている。加えて、重要データの保持など一定レベルでベンダーロックインからの“逃げ道”を検討する必要があることも明らかにしている。
同社の松本聡氏(ITサービスグループリサーチマネージャー)は「徹底した情報の開示や業界標準アーキテクチャの採用は、ロックインに対するユーザー企業の懸念を緩和し、ベンダーの競争力強化にも有効」と説明。加えて「ロックインの懸念を上回る圧倒的な優位性、たとえば経済性や革新的なサービスの提供も、クラウドサービスの事業拡大には求められる」とコメントしている。