IT活用とディスカッションで効果的な案件開発を実現したダイキン工業

山下竜大 冨田秀継 (編集部)

2011-12-31 15:00

点から面へ 営業体制とIT活用を見直し

 ダイキン工業では、「ダイキンエアコン」を中核とした空調・冷凍機部門、フッ素製品を提供する化学部門、各種油圧機器を提供する油機部門、「COMTEC(Communication Technology)」ブランドを推進する電子システム部門など、幅広い事業を展開している。2011年3月31日に終了した108期の売上は1兆1603億円。そのうち86%以上が空調・冷凍機部門で、化学部門が10%弱、そのほかの部門が4%弱という構成となっている。

 化学部門では、フッ素を利用した製品を提供している。たとえば、耐熱性、耐薬品性等が要求される自動車部品用のフッ素ゴムやフッ素樹脂、半導体分野で利用される半導体エッチング剤、スマートフォンのタッチパネルなどで利用されるフッ素コーティング、鍋やフライパンの焦げ付きなどを防ぐためのフッ素塗料、洋服の汚れや水をはじく繊維処理剤など、さまざまな分野で利用されている。

新家伸洋氏
新家伸洋氏

 現在、化学部門で取り扱っているフッ素製品の数は1800種類以上あり、自動車や半導体、電子機器、家庭用品、医療関連など、さまざまな市場に対応していかなければならない。化学事業部 開発営業部 部長である新家伸洋氏は、「これまでは、樹脂やゴム、化成品など、商品ごとに担当者が別れていたために、1つの会社に別々の担当者が営業展開するなど、効率的でないという課題を抱えていました」と話す。

 また顧客にとっては樹脂の活用が有効であるにも関わらず、ゴムの営業担当はゴムしか販売しないなど、営業活動が狭い範囲に限られてしまうという課題もあった。そこでまずは、自動車、半導体など、業種ごとに営業担当を配置する組織に移行し、これまでの「点の営業」から「面の営業」が可能な体制を確立。さらにITを活用した情報共有のあり方に関しても根本的な見直しを実施している。

ひびきの情報をもとにディスカッションを実施

 ダイキン工業では、グループウェアを利用して営業情報の共有を行っていた。そのグループウェアでは会議室を簡単に作れる点は良かったのだが、情報を登録すると会議室のメンバーにメールが配信され、そのメールで議論をしている気になることが大きな課題だった。新家氏は、「メールでは感情も伝わりにくく、新しいアイデアも出にくい状況で、個人のレベルアップにつながりませんでした」と話す。

 またグループウェアを使い続けていくうちに、同じような会議室がたくさんできていることや、いつの間にか会議室がなくなっているなど、営業情報を一元的に管理することができないことも課題のひとつだった。こうした情報共有の課題を解決することを目的にダイキン工業では、2010年10月にドリーム・アーツの協業系業務ソリューションである「ひびきシリーズ」を採用することを決定した。

 ひびきシリーズには、各分野の営業担当者が、日々の営業情報を入力している。入力された情報は、すべての営業担当者や研究開発者が参照して、業界の変化や市場の動向などの把握に努めている。さらに入力された営業情報に基づいてディスカッションすることで、新しい市場の開拓や製品の開発につなげることも目指している。新家氏は「あるお客様での成功事例を、別のお客様に提案することもできます」と話す。

 「現在、ひびきに入力された内容をもとに、月曜日の午前中に開発営業部全員でディスカッションを行っています。さらに月に1回、部内でのディスカッションを行っています。このとき、単にほめるだけでなく、もっとこうした方がいい、こんな考え方もあるなど、可能性を広げるディスカッションを行うことを心がけています。これにより、若い社員の開発に対する見方や考え方が磨かれ、洗練されてきているのを感じています」(新家氏)

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