2011年11月下旬、フランス・パリ郊外でダッソー・システムズがEU圏のユーザーイベント「European Customer Forum」を開催した。
日本のユーザー企業としてニコンが講演し、同社のユーザー企業の中でも珍しいデザイナーによる3D CAD(CATIA)の利用がどのように行なわれているのかを説明した。
最初から3Dですべてを
ニコンがCATIA V6ユーザーであることは、11月22日付けの同社のプレスリリースでもユーザー採用事例として紹介されている。パリではこの発表とほぼ同時にセッションという形で、この事例がニコンの担当者自身による説明で紹介された。ニコン 映像カンパニーはカメラメーカーとして日本を代表する存在だが、これは日本に限った話ではなく、世界レベルのリーディングカンパニーだ。それゆえ、EU圏向けに行なわれたイベントの中のセッションの1つではあるが、多くの来場者を集めていた。
ニコン 映像カンパニーの茂呂健氏
講演したのはニコンの映像カンパニー デザイン部 プロダクトデザイン課の茂呂健氏で、同氏はニコンでのCATIAの導入に関してCATIA V6プロジェクトチームリーダーとして主導的な役割を担ったのだという。
製造業でCATIAを使うとなれば、通常は部品の設計などの用途を思い浮かべる。しかし、ニコンの場合は導入主体がデザイン部ということからも明らかだが、外観デザインを考える際のデザインツールとして採用された点が特徴だ。
最終的な製品を作る段階では、外観デザインに関しても製造/生産のためのデジタルデータに落とし込む必要がある。一般的な手法としては、デザイナーが作成したデザインを3D CADに置き換えるのはエンジニアの仕事となっていることが多いそうだ。ニコンの方法では、デザイナーが3D CADをデザインツールとして使いこなすことが必要になるが、エンジニアの支援が不要になり、デザインから製品化までのサイクルタイムが短縮できるというメリットがある。
ニコンでは、1995年に3D CADをデザイナーがツールとして利用し始め、2000年台前半にCATIA V5を導入、そして2011年には新バージョンであるCATIA V6の利用が始まったという流れだ。まずCATIA V5を導入した段階で製品開発に要する時間が期待以上に短縮できるという成果が上がったという。市場での変化の速度も速まっており、開発すべき製品数の増大ペースも高まっていることから、CATIAによる開発期間の短縮は直接的なメリットを生んでいるといえるだろう。
CATIA V6の導入は、2010年からトライアルが開始され、2011年に本格稼働を開始した。約1年に及ぶ検証期間中に茂呂氏が最も注目していたのが「LiveShape」および「Rendering」だという。同氏が「デザイナーにとってのV6のメリット」として「レスポンスが速くなった」「表示されるイメージがより美しくなった」「LiveShapeが使える」「Renderingの機能強化」の4点を挙げていることからも、LiveShapeとRenderingの重要性がうかがえる。