高度な3D技術で“Lifelike”を実現--ダッソーが欧州イベント

渡邉利和

2011-11-24 12:52

 PLM(プロダクトライフサイクル管理)で知られるDassault Systèmsは、EU圏のユーザー向けイベント「European Customer Forum」をパリ郊外で開催した。初日となる11月22日には、Plenary Sessionとしてさまざまな講演が行われ、同社のビジョンやユーザー事例などが紹介された。

ツールから体験へ

 “Expanding PLM with Lifelike Experience”と題して講演したPresident兼CEOのBernard Charlès氏は、同社製品のバージョンアップの歴史を紹介。当初の「デザインのための3D」から「デジタルモックアップ」を経て、前バージョンのV5で「PLMのための3D」(3D for Product Lifecycle Management)となり、最新バージョンのV6では“3D for Lifelike Experience”が実現したと振り返る。

  • Dassault Systèms製品の発展経緯

 その上で同氏は、Dassault Systèmsの2021年のビジョンとして“Product in Life”を掲げた。デジタル化(Digitalization)は現在の製品(Product)レベルから人体や自然環境にまで対象を広げる一方、この技術の利用者コミュニティは現在の企業から研究、教育、そして社会全体にまで拡大していく、という展望だ。

 現在の同社の3D技術でも、すでにかなり高度なレベルでデジタル化が実現しており、なお精力的な進化を続けている。人体のデジタル化では、医療分野などを対象に関節の動きを精密にモデル化した例が紹介された。


Dassault Systèms President兼CEOのBernard Charlès氏

 また、自動車の運動解析の例では、「自動車の動き」を表現するモデルを作るのではなく、タイヤやサスペンションといった部品それぞれを精密にデジタル化することで、これらの部品を実車と同様に組み立てることができる“デジタル自動車”が、実車と同様の挙動を示すというレベルで実現できる、というデモも紹介された。

 Charlès氏が言う“Lifelike”な3Dモデルとは、単に形状が正確で、実物を写真に撮ったようなきれいな外観が表現されているというレベルではなく、モニタの中で実物とまったく同じように操作でき、測定や分解、組み立てができるといった「実物そのもの」であることを意味する。

 その上で、従来は個別の機能を実装したアプリ群として構成されていた同社の製品を、統合されたオープン・アーキテクチャによるプラットフォーム上で組み合わされるソフトウェア・コンポーネントと位置づけ直したことを強調した。3D CAD製品であるCATIAやモデリング/シミュレーションのためのSIMULIAといった製品群がすべて同じV6というバージョンで揃えられ、“V6”というだけで全製品をまとめて示すようになっているのも、こうしたモジュール構造の反映だ。

  • 最新のVersion6の製品構成。製造業向け3Dツールという枠を超え、IT側の基幹アプリであるERPやSCM、CRMなどと密接に連携するところまで視野に入ってきている

 さらにCharlès氏は、Dassault Systèmsを単なるアプリソフトの会社とは考えていないことも明らかにしている。従来型のオンプレミスでのソフトウェアの販売に加えて、クラウド型のサービスも開始している。同社が提供するものは3Dソフトウェアではなく、“Lifelike Exprience”である、というのが同氏のメッセージである。その上で「Dassault Systèmsの革新性はどこにあるのか」という問いに答える形で、同社製品を活用しているユーザー企業がさまざまな革新的な成果を実現している点を挙げた。

 IT企業などでは単に自社製品だけに注目した上で「革新的」といった表現を使うことも珍しくはないが、Dassault Systèmsでは同社の提供する“Lifelike Experience”を活用したユーザーがそれを使って何を実現したかを見ることで、同社の優位性が実証できるという立場だ。実際に講演中で紹介されたさまざまなユーザー事例やデモを通じて、どれほどのユーザー企業が同社の製品を活用しているかがアピールされており、参加者は「現在の3D技術はどこまで到達しているのか」をリアルに実感できたはずだ。

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