ハッカーマインドでいこう!前編--Linuxが果たした役割 - (page 2)

富永恭子 (ロビンソン)

2012-01-06 20:50

Linuxの奇跡-1「バザールモデルの確立」

 Linuxの奇跡は、大きく2つのことを20年間かけて証明したことによって起きたと私は考えています。

 私がオープンソースに出会ったのは、1998年にNetscapeがソースコードを公開したときでした。当時、オラクルのサーバテクノロジ部門でSQLの国際化を担当し、シリコンバレーにいた私は、それを目の当たりにして「オープンソースのうねり」を肌で感じました。さらにフリーソフトウェア・プログラマーだったエリック・レイモンド氏が1997年に発表した論文「伽藍とバザール」を読み、今、世界でスゴイことが起こりつつあるのだと確信しました。この論文は、まさにLinuxが起こした奇跡とは何であるかを論説したものでした。それが「ソフトウェアにおけるバザールモデルの確立」です。

 レイモンド氏は、「伽藍とバザール」の中で、これまでのソフトウェア開発になかったオープンソースによる新しい開発方法の違いを明示しました。

 たとえば、大聖堂を設計し、建設するような「伽藍モデル」がこれまでのソフトウェア開発の手法であるとすれば、これに対して、混沌とした「バザール」のような世界から生み出されるものがオープンソースであること。また、ソフトウェア開発においては、設計図をもとに、チームがそれを細かく分担する「伽藍モデル」よりも、あるソースコードがあってそれをみんなが勝手に機能を追加したりバグを取り除いていくという「バザールモデル」のほうが、ずっといい成果が出るということ。さらに、技術革新で一番重要なのはすぐれたアイディアを潰さずに成長させていくことであるとするなら、「伽藍モデル」では参加者を限定するために多様性が担保されないが、「バザールモデル」はこれをやすやすと突破するとレイモンド氏は論じています。

 つまり、レイモンド氏の言葉を借りれば、「これまでのソフトウェア開発になかったバザールモデルという開発手法を実証して、それが有効であることを示した」ことが、Linuxの最も大きな功績であるといえます。

Linuxの奇跡-2「企業とコミュニティとの共存共栄」

 Linuxの功績は、その普及そのものにもあります。特にインターネットの分野にいえることですが、オープンソースソフトウェアは、Linuxの普及によって「利用を広め」かつ「重要なITインフラの基盤を担う」ようになりました。さらにいえば、オープンソースソフトウェアはいまやインターネットの基盤をもつかさどっており、SendmailやApacheなどほとんどはオープンソースがベースとなっています。

 その背景には、企業とLinuxコミュニティとの共存共栄があり、その道を開いたことがLinuxのもうひとつ奇跡だといえるでしょう。

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