アイ・ティ・アール(ITR)は3月29日、統合基幹業務システム(ERP)市場と中小企業向けERP市場の規模推移を発表した。国内ERP市場全体の規模は2010年度が前年度比4.7%増の762億円、2011年度は同7.8%増の約822億円になるとしている。
景気回復でIT投資が徐々に拡大していることが背景にあるという。大企業向けはグローバルシステム化に伴う基幹系システムの刷新、中堅企業向けはレガシーからの刷新、グローバルでのシステム対応が原動力になっているとしている。
中小企業向けの出荷金額は2010年度が前年度比18.9%増の170億円と、ほかの企業規模向けを上回る伸びとなっている。この数年、景気後退で抑制傾向にあったパッケージの刷新需要だが、2010年度は、パッケージ刷新を再開するユーザー企業が増え、2011年度も刷新中心に同11.2%増の伸びを予想している。
2011年度の中小企業向けERP市場のベンダーシェア(予測値)を見ると、2009年度から3年連続して上位3社が半数のシェアを占める寡占市場となっている。オービックビジネスコンサルタントが2010年度に引き続き首位を堅持し、21.1%のシェアを獲得。2位には、会計分野に強いミロク情報サービスが18.0%とシェア拡大、1位との差を縮めつつある。3位のOSKはパートナー企業からの販売が拡大し、2010年度に続いて出荷金額を大きく伸ばすと予測している。
ITRのプリンシパル・アナリストの浅利浩一氏は「中小企業向けERP市場は、本来SaaS型が最も伸びる潜在力を期待できる市場だが、提供形態別で見たSaaS型のシェアは、大企業向け、中堅企業向けに比べて低く、2%程度にとどまっている」と説明する。
さらに同氏は「計画的に導入し、いったん導入したら安定的に利用できるパッケージ製品を超える大きなメリットを提示できなければ、中小企業向け市場でSaaS型が大きく伸びることも、ベンダー別シェアの勢力図を大きく変えることも難しい」と分析している。