ITの変化に技術者の対応が遅れている--IPAのIT人材白書2012 - (page 3)

三浦優子

2012-05-14 11:17

 まず、IT技術者に求められる「質」とは具体的にはどんなものかについて調査を行ったところ、IT企業、ユーザー企業ともに、同じIT技術者でも業務内容によって大きく異なることが明らかになった。

 IT企業の場合、受託システム開発を業務としている場合にはプロジェクトマネジメント力が1位、パッケージソフトウェア開発では新しい価値を生み出す力が1位、ASP/SaaSでは最新技術に関するスキルが1位、アウトソーシングでは顧客業務に対する分析力・改善提案力が1位となった。

 ユーザー企業の場合は、IT戦略立案、業務改革推進・新ビジネス支援では現場業務に対する分析・改善提案力が1位、情報システム開発・マネジメントではプロジェクトマネジメント力が1位、情報システム運用・保守では最新技術に対するスキルが1位となった。こうした足りない質を持てば、IT技術者には活躍場面が生まれることにつながる。

自己研鑽に関する取り組み時間(週単位) 自己研鑽に関する取り組み時間(週単位)
※クリックすると拡大画像が見られます

 さらにIT企業、ユーザー企業が最も不足を感じるIT人材の質としては、「技術力」という結果となった。技術力の質を上げるためには人材育成が不可欠という回答が多いが、従業員規模の小さい企業ほど、「社内の人材育成が不十分だから」と答えている。

 採用市場と技術者のミスマッチも明らかになっており、今回の調査とは別に、リクルートに企業の採用傾向を調査したところ、「2011年度から今後の成長のために積極的に採用を行う企業が増加しているが、アプリケーション系ではJavaが求人倍率6.62倍、インフラ系では設計・構築の求人は2.84倍となっている。こうした技術を持っている技術者には優位な状況となっている」(田中理事)と求人人気の高い技術とそうではない技術で大きな開きが出ている。

 田中理事は「今回の調査からも、これまでIT技術者の最も多かった受託開発業務ではないという傾向が明らかになっている。それもアジャイル開発で、自分で仕様書を書けるにとどまらず、自ら企画して手が動く人材が求められている。クラウドなどにも積極的に取り組み、SaaSのサービスのインプリメントを積極的に行うといった変化を遂げれば、日本のIT技術者の将来は決して暗いものではない」と、旬な技術にいち早く取り組む姿勢の重要性をあらためて強調した。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]