クラウドでプロトタイプ開発・検証、スピードのあるIT部門を目指せ
2つ目はクラウドを利用した「Value Prototyping」となる。迅速な導入を支援する「Rapid Prototyping」はSAPが10年ほど前から提供しているものだが、三井物産は今回クラウド環境でこのサービスを利用するというもので、2011年から2本のプロジェクトを行った。自社の既存システムを土台とする複雑なソリューションの検証であり、SAPのクラウドの中に自社システムをコピーし、そこにSAPが追加・変更しながらプロトタイピングした。
林氏は最大のメリットとして、スピードを挙げる。「環境を作るのに時間がかからないし、もとからあるテンプレートを使えるので速い。しかも無駄がない」、さらに「SAPを熟知している人がやるから速い」という。エンドユーザーに動いているものを見せることで要件が明確になり、リスクも減る。検証にとどまらず、最終的に運用にするときもこのプロトタイプから本番にいくことができそうだという。
林氏が出席したパネルからは、システム構築が多様化した現実が垣間見れた。三井物産は、2つのプロジェクトでSAPのCo Innovationプログラムを利用し、自社独自のニーズを満たすためにSAPと協業している。林氏は、自社でクラウドやサービスを作る時代が変わりつつあると見ているようだ。
「クラウドやサービス化のトレンドを取り入れたいし、Co Innovationプログラムなどのサービスを利用すれば、自分たちが欲しいサービスをパートナーとして一緒に作ることができる。将来はこの方向に向かうのではないか」(林氏)
これには、われわれを取り巻く環境が変化するスピードが加速していることが無関係ではない。「これまではサーバ調達に1カ月、設定に数週間と時間をかけていたが、少しでも速くサービスを提供することが大切になってきた」と林氏。ビジネスのライフサイクルが短くなっており、IT側もこれに迅速に適応する必要がある。「ビジネスの要求にいかに速く応えるかが大切」と語る。
新しいコンピュータパラダイムであるクラウド。SaaS、IaaS、PaaSなどのキーワードがあるが、今後クラウドの効果的な利用について模索がまだまだ続きそうだ。さらには、それが企業のIT、さらにはITが支えるビジネスの競争力につながることになりそうだ。