IDC Japanは6月5日、国内企業のデータ保護や災害復旧(DR)を分析、クラウドサービスへの移行も含めた調査結果を発表した。この調査は、バックアップ運用やDR対策の現状と課題、ニーズを解明するために同社が毎年展開している。今回の調査は、東日本大震災に影響されて対策内容や投資動向にどのような変化があったかに焦点を当てている。
2011年末から2012年初に展開したユーザー調査の結果から、大震災で実際に経験したり、見聞きしたりしたことがユーザーの行動や心理に大きな影響を与えていると分析する。具体的には、事業継続計画(BCP)の改訂、セカンダリサイトの移転、電力供給問題への対応などを多くの企業が実施。2012年度のDR対策予算を増加させる企業の割合も増えていると説明している。
クラウドサービスへの評価が好転したことも大震災による傾向変化の一つという。大震災後にいくつかの地域で実施された計画停電で、データセンター事業者は自家発電設備で運営を継続したことがユーザーの信用につながり、データセンターアウトソーシングやクラウドサービスをDR対策の仕組みに組み込む必要性を認識するユーザーを増やしたとコメントしている。
サーバ仮想化技術の本格的な普及も、DR対策の傾向に変化を与えている要因とする。多くのユーザーは仮想化技術の導入でDR対策のコスト削減を図れることを理解していると回答。だが、ユーザーは仮想化技術の導入にメリットだけを感じているわけではないことも明らかになっている。
課題と認識されているのは、仮想化技術の導入でDR対策システムの運用が複雑化することだ。DR対策に活用される製品やサービスを提供するベンダーやシステムインテグレーターにとってはシステムの統合管理やモニタリング、可視化などを最適に組み合わせて、仮想化環境でのシステム運用がユーザー負担とならない仕組みを提供することが訴求点になると提言している。
IDC Japanの鈴木康介氏(ストレージシステムズリサーチマネージャー)は「大震災の経験を経て、国内企業の多くは、以前から準備していたBCPの不足な点を理解して、実効性の高いものに改訂している」と説明。「システムの災害対策にも電力供給問題への対処など新しい課題が加わり、セカンダリサイトの所在地の検討も含めて、システム再構築が急がれている」と分析している。