GigaOM誌によれば、Windows Phone対応アプリの数が10万を超えたにも関わらず、そのシェアが低下傾向にあると言う。App StoreやGoogle Playは50万以上なので、大きく水を空けられているものの、10万に達したスピードは、Androidよりも早い。
プラットフォームビジネスにおいて対応アプリを増やすというのは正攻法であるが、その効果がシェアに表れないのは何故だろう。
何故伸びない?
先の記事の執筆者は、Windows Phoneのユーザビリティは結構良いと言う。そして、その同僚にもそうした声は多いようだが、それは必ずしもマーケットシェアには繋がっていない。記事によれば、Windows Phoneの2012年第1四半期のシェアは1.9%で前年の2.5%から更に落ちている。
高いユーザビリティを実現し、そして対応アプリの数も伸ばしている。本来ならば、劇的ではないにしろ、これが市場シェアにじわじわと反映しても良さそうなものであるが、更に下落する結果となっている。GigaOM誌の記者は、もはやアプリの数は市場シェアに大きな影響を与えなくなっているとコメントしている。
完全なる“コーペティション”戦略
MicrosoftがWindows Phoneのシェア拡大のために取った戦略は完全なる“コーペティション”戦略であって、プラットフォームビジネスの正攻法である。コーペティション戦略というのは、市場拡大期において競合他社と一定の協力関係を築いたり、プラットフォームビジネスにおいて他のプレーヤーとの補完関係を重視する考えに基づく(コーペティション<Co-opetition>とは、Co-operationとCompetitionを組み合わせた言葉である)。
例えば、PCやサーバのシェア争いであれば、そのOSに対応したアプリケーションの数が、OSのユーザビリティや機能そのものよりもより重要になる。あるいは、ゲーム機においても、機能そのものよりも、対応するゲームソフトの数や人気ソフトの有無が売り上げを左右する。
同じ考えで行けば、Windows Phoneにおいても、対応アプリの数を増やし、人気アプリをWindows Phoneに対応させていけば、ある程度まではシェアを獲得できるのではないかと考えられる。ユーザビリティでも劣後していないのだから。
制御不能の競争環境
競争戦略論というのは、外部環境が変わってもその基本原則が大きく変わることはあまりない。しかし、その環境の変化に対応して、その適用の仕方や解釈の仕方を変える必要はある。
では、今の時代、何故コーペティション戦略がワークしないのか。
一つには補完関係となるプレーヤーの数の爆発的増大がある。かつてのPCやサーバのOSとアプリケーションの時代、あるいはゲーム機とゲームソフトの時代においては、その開発を行うことが出来る企業の数は限られており、また、仮に開発が出来てもマーケティングやディストリビューションまで行うことは難しかった。故に、補完関係となるプレーヤーを特定し、手厚く支援を行うことが出来た。
しかし、クラウド環境においては、企業から個人までが入り乱れてアプリを開発し、App Store、Google PlayそしてWindows Phone Marketplaceを通じてディストリビューションを行うことが出来る。その数は既に制御不能である。
そしてこれは、結果的に市場拡大のスピードを加速させ、所謂“First-Mover Advantage”を従来以上に加速させ、フォロワーによる参入障壁を高くすることとなる。それ故に、追いつくための投資コストは、想定以上のものとなる。
これらは、当然のことと言えば、当然のことであるが、その戦略に対するインパクトを予測することは難しい。戦略を遂行するに際し、環境の変化に踊らされるよりも、まずは基本に立ち返って戦略を立てるべきである。しかし、その選んだ戦略に影響を与えるであろう外部環境のパラメーターとその変動が与えるであろうインパクトを、慎重に見極めることが最も重要だと思う次第である。
Keep up with ZDNet Japan
ZDNet JapanはFacebookページ、Twitter、RSS、Newsletter(メールマガジン)でも情報を配信しています。
飯田哲夫(Tetsuo Iida)
電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。