「Interop Tokyo 2012」3日目となる6月15日、米IBM システムズ&テクノロジー・グループ システムズ・チーフ・エンジニアでIBMフェローも務めるGururaj Rao(グルラジ・ラオ)氏による「新たなコンピューティング時代の幕開け~ITの常識と経済性を根底から変えるIBM PureSystemsの全貌~」と題した基調講演が行われた。同社が発表した「IBM PureSystems」がビッグデータ時代において求められる、ITの新たな常識を提案するものであることを強調する内容となった。
講演の冒頭、Rao氏は「今、新たなコンピューティングの世界へと入り始めている。ITインフラ全体を違った視点から捉えていく必要があり、システムとネットワーク、ストレージをこれまでとは異なった形で組み合わせていく必要がある。ここには課題とチャンスがある」と説明する。ソーシャルメディアやセンサデータを通じて、毎日2.5エクサバイトのデータが生成されていることを示しながら、ビッグデータの分析がいくつかの社会的問題を解決している例を示した。
米テネシー州では犯罪パターンを検知し、重大な犯罪を30%削減、米ニューヨーク州では20億ドルの脱税を防止し、1億ドルの税金の支払い遅延を解消、ストックホルム市では市街地の渋滞を18%削減し、8万人が公共交通機関を利用している――などの実例を示している。
「以前のクライアントサーバの時代とは異なり、リアルタイムでの処理と、膨大なデータ処理が求められている。情報システムが自動化やコスト削減ではなく、新たな価値を創造し、クライアントバリューを提供することが求められている」
新たな時代のコンピューティング環境に対応するために、3つの観点にフォーカスする必要があると説明する。
「1つは意思決定のためのバリューをビッグデータの中から導き出していくこと、2つめにはITのサービスデリバリの効率性をいかに高めていくかという点。最後に仮想化やプロビジョニング、自動化によって管理性を高めていくこと。これを解決するのが、IBMが取り組むスマーターコンピューティングになる」
InfoSphere Streams、Big Insight、Cognos、SPSS、Smarter Cloud Entryといった同社の製品群を紹介しながら「タスクに基づいて自動的に最適化するシステムとして、PureSystemsやWatson、ストレージではStorwizeがある」と同社の製品で完結できることを強調している。
PureSystemsについては「これまでの世界とは違う製品、これまでの業界にはない製品。業界で行われた発表の中でも最も重要なものになった」と前置きして、こう語る。
「すでにインフラシステムであるPureFlexと、プラットフォームシステムのPureApplicationを市場に投入している。これによって深い形でサーバ、ストレージ、ネットワークを統合できるだけに留まらず、IBMやビジネスパートナー、顧客の専門知識も統合されるものとなる」
Rao氏は、その開発の背景として「タブレット端末やスマートフォンのように、最初からアプリケーションがインストールされ、設定も自動的にやってくれる環境をエンタープライズシテスムでも実現できないか、という発想から生まれたのがPureSystemsである」ことを明らかにしている。
「実際に(PureSystemsは)4回のクリックでクラウドアプリケーションの迅速な実装ができる。サーバやネットワーク、ストレージだけでなく、OSやファームウェア、仮想化やセキュリティをビルトインし、これらをアップグレードし、スケールアウトもできる。クラウドベースの技術を統合することもできる。システム全体をひとつのコンソールで管理できる。これによって桁違いのパフォーマンスを実現することにもつながっている」