最高経営責任者(CEO)は“つながり”を重視している――。IBMは世界の主要企業のCEOを中心にした調査「IBM Global CEO Study」を行っている。最新版の調査結果を日本IBMが5月23日に発表した。
FacebookやTwitterをはじめとするソーシャルメディアは消費者はもちろん、組織や企業にも浸透しており、経済が地域や国境を越えて連結するようになると同時に、さまざまな関係性に大きな変化をもたらしているとIBMは説明している。
このソーシャルメディアの爆発的進展から、これまで以上に人々が広く深くつながっていく環境をIBMは「コネクテッドエコノミー」と命名。今回のGlobal CEO Studyでは、CEOが進化するコネクテッドエコノミーへの対応を急速に進めていることが分かったという。
「今後3~5年で自社に影響を与える外部要因」についてCEOの73%が「テクノロジ」と回答している。過去の調査と比較して初めて最重要課題になっている。顧客や消費者、生活者、市民がいつ、どこで、どのようなニーズを持っているのか、“個”のレベルで正確に理解、対応するのはテクノロジによるからだ。テクノロジの進化が、個々の従業員や組織の創造性を生み出して、コラボレーションや意思決定、業務運営の新しい方法を提供できるようになるとIBMは説明している。
Global CEO Study 2012では、売上成長率と収益性が業界平均より高いと回答した企業を「高業績企業」と定義し、それ以外の企業と比較分析している。高業績企業がコネクテッドエコノミーで優位性を確立するために(1)価値観の共有を通じて現場に権限を委譲する、(2)“個”のレベルで顧客に対応する、(3)パートナーシップでイノベーションを増幅する――という3つの取り組みに注力していることが明らかになっている。
(1)は組織をオープンにして、現場に権限を委譲して社外とより積極的につなげることを狙っている。現場が成功するために必要な特性として「協調性(75%)」「コミュニケーション能力(67%)」「創造性(61%)」「柔軟性(61%)」という4つを挙げている。優れた従業員を惹きつけるために重要となる組織要員として「共有される価値観(65%)」「コラボレーションを推奨する職場環境(63%)」「組織のミッション(58%)」を挙げている。
(2)については、今後3~5年でソーシャルメディアが対面に並ぶ主要な顧客接点になると説明している。個々の顧客を理解する重要性は10年もの議論が交わされてきているが、現在はようやく実現手段が追いついてきたという。「現時点でソーシャルメディアが重要な顧客接点である」という回答は16%に過ぎない。だが「3~5年後には重要な顧客接点になる」という回答が57%になっている。CEOはソーシャルメディアが“個”客に関する洞察の源泉であり、“個”客とつながる手段と考えているとしている。
(3)については、他社と積極的に連携することを指している。2008年の調査では55%だったが、2012年の調査では69%に拡大している。高業績企業では、「イノベーションを実現するために他社と広範囲に連携する」という回答が59%に上り、低業績企業と比較して、他社とのつながりを重視する割合が28%高いことが認められていると説明している。