「ビッグデータ活用を前提にした時、企業に必要なIT担当者の人材像は今のIT部門の人材像とは異なるだろう」
こう話すのは、データ分析ソフトウェア大手の米Teradataの最高技術責任者(CTO)、Stephen Brobst氏だ。3月9日に東京で開催されたテラデータのユーザーカンファレンスで、Brobst氏に企業のIT担当者「IT People」に求められる条件を聞いた。
Teradataは2011年度、前年比22%増の23億6200万ドルの売り上げを記録した。2011年4月には、非構造データ分析ソフトウェア提供のAster Dataを買収。さらに人材採用でも2008年以降、コンサルタントを63%増やすなど攻めの経営を展開中だ。
Brobstによれば、採用するコンサルタントの基準がひと昔前とは違ってきている。
「25年前の初来日以来、日本が好き」というBrobst氏
「数字への感覚があり、ビジネス感覚に長けている、好奇心があることも重要だ」(Brobst氏)
こうした素養を持つ人を「データサイエンティスト」と呼ぶものの、自身も明確な人材像がまだ固まっていないとのこと。数字への感覚は大量データ分析を前提にしたときに改めて意識したもので、Teradataの「コンサルタント採用活動にも当てはまる」という。
今現在、理想のIT Peopleはどの部署にいるのか。
「あえて挙げるなら、企業の市場調査部門、財務部門、保険業界におけるアクチュアリーのような部門だろう。数字を使ってリスク分析をしているような人が候補といえる」(同)
Brobst氏からは、プログラミングスキルなどの言葉は出てこない。
構造化データに加え、ソーシャルメディアでの発言などの非構造化データを交えた大量データを分析し、売り上げ増加をもたらす要因を見つける--ビッグデータを経営戦略の立案に生かそうとする動きがある中で「IT部門への要求は変化し始めている」(同氏)と指摘する。
では、実際には大量データをどのように分析し、ビジネスに生かすことを想定しているのか。Brobst氏は、一例として通信キャリアにおける顧客の離反防止策を挙げる。ただし、日本では憲法の第21条が定めている「通信の秘密」の守秘義務に抵触する施策もある。国内の通信キャリアが実施できる施策の範囲は米国などとは異なることを強調しておきたい。ここではビッグデータ分析による効果の例として紹介したい。
例えば、組織内でJoe、Mary、Edward、Smithなど多数の構成員が携帯電話で業務連絡を取っている場合。発着信データの分析で「Joeが鍵を握る人物であると分かる」(同)。
それにより「Joeが解約すると、多数のユーザーも芋づる式に解約する恐れがある、というビジネスリスクを認識できる」(同)。こうした情報を生かし、解約阻止策の実施などの策が打てれば、売上高や利益の増加、コスト削減といった効果が期待できるというわけだ。