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記事まとめ「テレワーク常態化で見えたこと」

ソーシャルプライシングがやって来る

飯田哲夫 (電通国際情報サービス)

2012-02-07 11:20

 インターネットは、消費者に力を与えた。我々は価格.comのような比較サイトを活用することで、買いたいものを最も安い値段で手に入れることができる。

 しかし、どうやらその優位性も長くは続かないようだ。ここ最近、我々はあまりに自分達の行動を赤裸々にソーシャルネットワーク上に書き過ぎてしまったようなのだ。

価格差別の考え方

 価格の比較が容易になると、値段の高いところは淘汰されて、最終的に一つの価格に収斂されそうなものだ。しかし、現実には一物多価が無くなることはない。なぜなら、我々は常に同じものに同じ価格を払う訳ではないからだ。

 つまり、高いと分かっていても、支払ってしまうという状況がある。身近な例で言えば、夜遅く帰宅する際、明日の牛乳が無ければ、高いと分かっていてもコンビニで牛乳を買う。また、休みが連休にしか取れなければ、高いと分かっていても連休の旅行を予約する。

 つまり、同一の商品であっても、時間、場所、顧客属性などによって異なる価格を設定することで、売り手はその収益を最大化しようとするし、買い手もそれを受け入れる。これを価格差別(Price Discrimination)と呼ぶが、これが実現されるには、異なる価格で販売される、それぞれの市場が分離されている必要がある。

 しかしながら、インターネットはその市場の隔壁を容易に乗り越えて価格の比較を可能とするために、消費者は価格差別を逃れ、最も安い価格に辿り着くことが出来る。つまり、オンライン上ではより価格差別が難しく、売り手には厳しい環境となる。

進化するプライシング

 しかし、この価格差別の進化したものとして、ソーシャルプライシングとでも呼ぶべきものが登場しようとしているらしい。こちらの記事では、これをBehavioral Pricing(行動に基づくプライシング)と名付けている。これは、ソーシャルネットワーク上の行動様式に応じて、買い手が払ってくれそうな最大のプライスを予測して、それを提示しようというものである。

 我々があまりにも頻繁にその行動をつぶやいてしまうが故に、我々が何に興味を持っていて、どんなところで食事をしていて、どんな家に住んでいて、今、何を、いつまでに、どのくらい欲しているのかが、全てではないにしても、単にオンラインショップへやってきた顧客よりも遥かに良くわかってしまうのである。

 それでも、常に価格を比較すれば良いではないかと思うかもしれないが、先の例に見たように、我々もタイミング、商品カテゴリなどの条件によって、価格にセンシティブな時とそうでない時がある。それを精緻に予測できれば、売り手は常に最低価格で売るのではなく、個々の顧客のソーシャルネットワーク上の活動から導き出される結果に基づいて最大価格で販売できるのだ。

売り手の逆襲

 今、オンラインマーチャントはその蓄積された情報をどう活かすか考えている。そして、The Next Web誌によれば、それに応えようとプライシングに特化したベンチャーが市場へ参入しようとしている。

 売り手が最大の価格で売ろうとし、買い手が最低の価格で買おうとするのは、経済活動としては極めて健全なことだ。ただ、我々は、ソーシャルプライシングが我々を待ち受けていること、そして、そのプライシングが、これまで以上に巧みに我々が払っても良いと思う金額に設定されているだろうことを理解する必要があるだろう。

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飯田哲夫(Tetsuo Iida)

電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。

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