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まだまだ伸びるPtoP翻訳サービス

飯田哲夫 (電通国際情報サービス)

2011-10-18 08:00

PtoP翻訳サービス「myGengo」

 日本を本拠地とするPtoP翻訳サービス「myGengo」が、新たにベンチャーキャピタルから525万ドルを調達したという(CNET Japan)。つまり、同社のサービスがまだまだ伸びると考えている投資家が存在しているということだ。

 翻訳は、専門的な分野を除けばコモディティ化した労働集約型サービスである。受託開発が人月単価で測られるように、翻訳サービスは単語当たりの単価で価格が決まる。さて、そのサービスにリスクマネーをつぎ込むほどの成長が見込めるのだろうか?

 「myGengo」のサービスは、同社が定める基準を満たした翻訳者を確保し、その翻訳者とクライアントをマッチングさせるプラットフォームを運営する。また、翻訳の受発注を自動化するAPIを備え、営業活動の効率化が図れるITの仕組みを取り入れている。つまり、従来のエージェント型の翻訳業者と比して、高いコスト効率で翻訳サービスを提供できる訳である。

 それによって既存の翻訳エージェントから仕事を奪ってゆくことが出来る。しかし、最近のグローバルなビジネスの流れを考えると、その成長余力は既存市場の奪取だけにとどまらないように思われる。

決済通貨のアナロジー

 現在の先進諸国の経済危機と停滞に対し、新興国の成長が著しいのは周知のことである。新興国の成長の一つの軸は、先進諸国からアウトソースされる付加価値の低い生産やサービスの提供であった。

 しかし、先進諸国の成長が止まるなか、新興国はアウトソース先ではなく、市場としての存在感を強くしている。つまり、発注される側から発注する側への立場の転換が起きつつあるのだ。

 ビジネスで交わされるのは言葉ともう一つ、通貨がある。決済通貨は、その通貨自体のいろいろな意味での利便性と、取引者相互間の力関係で決まる。当然ながら買う側の方が発言権が強い。従来は先進諸国が発注者で新興国が受注者であった。

 しかし、新興国を市場と見る場合、その力関係は逆転する。結果として、徐々にではあるが新興国通貨建てでの貿易決済が増加傾向にあるという。また、グローバル取引において新興国間のボリュームも増加しているという。

 そして、決済通貨の選択において購買者の意向が強く働くのと同様に、言葉においても購買者の意向が強く働くのは当然である。eコマースにおいて、販売対象国の言語にサイトを翻訳しないことはあり得ないし、法人間の取引においても、より相手国に浸透するためには相手国の言葉を使う流れは加速する。

 つまり、翻訳ビジネスは、従来の先進諸国言語間の翻訳から、先進諸国言語と新興国の、あるいは新興国と新興国の間の翻訳へとその市場を拡大していくこととなる。そして、通貨と同様に、言語もその組み合わせごとに市場が成立する。

経済に連動する翻訳サービス

 つまり、先進諸国の通貨が価値を下げ、新興国の通貨が力を持ち始めたのと同様に、翻訳サービスも先進諸国言語から新興国言語のシェアが今後高まるに違いない。そこに既存市場における代替サービスを超える「myGengo」の成長余力があるのである。

 「myGengo」は品質維持のために無闇にサポート言語を増やすことはしないとは言っているが、BRICsはしっかりサポートしているのである。

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飯田哲夫(Tetsuo Iida)

電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。

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